教えて!けいゆう先生

飲んではいけない薬ってあるの?
自己判断でやめるのは厳禁 外科医・山本 健人

 「この薬は飲んではいけない!」

 「飲んではいけない薬ランキング」

 こんなタイトルの記事を、週刊誌やインターネット上で見ることがよくあります。こうした記事に影響され、本当は必要なはずの薬をやめてしまい、病状を悪化させてしまう患者さんも少なからずいます。

写真はイメージです【時事通信社】

写真はイメージです【時事通信社】

 本当に「飲んではいけない」ような、危ない薬が売られているのでしょうか。

 もちろん、そうではありません。

 ◆薬を「飲んではいけない」場合とは

 薬の中には「飲み合わせ」に注意すべきものがたくさんあります。

 例えば、一緒に使用すると副作用リスクが高まったり、効果が弱まったりしてしまう組み合わせがあるのです。薬同士が起こす、このような悪い作用を「相互作用」と呼びます。相互作用が理由で「飲んではいけない薬」なら、多く存在します。

 また、特定の持病を持つ患者さんが「飲んではいけない」、あるいは、少ない用量で使用しなければならない薬もあります。心臓や肝臓、腎臓の機能が悪い人が使用できない薬もあります。強い副作用が現れる危険性があるためです。

 以上のように、誰もが一律に「飲んではいけない」危険な薬があるわけではなく、どんな薬にも、使用に注意すべきシチュエーションがあるのです。

 あらゆる化学物質は、その量に応じて薬にも毒にもなります。副作用リスクのない薬はありません。副作用のリスクより、薬から得られるメリットの方が大きいシチュエーションでは、むしろ薬を使わなければなりません。

 週刊誌やインターネット上の記事は、あえて扇動的なタイトルをつけて読者の興味をひいたり、分かりやすさを優先して、解説をシンプルにまとめたりしているものです。大きな誤解をしないよう、注意が必要です。

 ◆薬をやめるにも技術が必要

 もちろん、患者さんが薬の内服を中断しなければならないシチュエーションも、実際にはあり得ます。

 「副作用が目立つようになってきた」「薬の効き目が薄れてきた」「他の持病の悪化によって使える薬が制限されるようになった」といったケースはよくあります。

 このような場面であっても、突然、薬をやめてしまうと、かえって危険な場合があります。ゆっくり減量しなければならない薬や、別の薬に置き換えなければならない薬などを急に中断すると、病状を悪化させる恐れがあるためです。「薬を始める」のと同様に、「薬をやめる」にも技術と専門知識が必要なのです。

 週刊誌やネット上の記事の影響を受けて薬をやめてしまうと、自らの体を危険にさらす恐れがあります。薬に関して疑問があるときは、自己判断で薬を中断せず、処方している医師に相談するのがお勧めです。

 この点には、くれぐれもご注意いただきたいと思います。

(了)

 山本 健人(やまもと・たけひと) 医師・医学博士。2010年京都大学医学部卒業。外科専門医、消化器病専門医、消化器外科専門医、感染症専門医、がん治療認定医、ICD(感染管理医師)など。Yahoo!ニュース個人オーサー。「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を運営し、開設3年で1000万PV超。各地で一般向け講演なども精力的に行っている。著書に「医者と病院をうまく使い倒す34の心得」(KADOKAWA)、「がんと癌は違います 知っているようで知らない医学の言葉55 (幻冬舎)」など多数。

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