医学の窓辺

タマネギのケルセチンは認知機能維持に役立つ
-ヒト介入試験で加齢に伴い低下する認知機能維持に役立つ機能を報告-

 タマネギに含まれる「ケルセチン1)」が、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つことを、ヒト介入試験により確認しました。高齢の健康な方に、ケルセチンを多く含む、またはケルセチンを含まないタマネギ粉末を約5カ月間食べていただき、一般的な認知機能検査を行った結果、ケルセチンを多く含むタマネギを食べた人の方が、摂取後に検査の点数が有意により大きく増加することを確認しました。今後、本成果を用いて、ケルセチンを関与成分とする、タマネギの機能性表示食品の届け出を目指します。

 高齢化が進む現在、食生活を介した認知症予防や加齢による認知機能低下の改善が期待されています。農研機構、北海道情報大学、岐阜大学等の研究グループは、野菜や茶、果物等に広く含まれており、タマネギに特に多く含まれる「ケルセチン」の健康機能性に着目し、タマネギのケルセチンが認知機能に及ぼす影響を研究してきました。

 今回、60-80歳の健康な男女70人に、ケルセチンを多く含む、またはケルセチンを含まないタマネギ粉末を約5カ月間(24週間)毎日食べていただき、摂取前後に一般的な認知機能検査であるミニメンタルステート検査2)を実施しました。ケルセチンを多く含むタマネギを食べた人は、ケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取後に検査の点数がより大きく増加することが確認され、タマネギのケルセチンが認知機能の維持に役立つことが示されました(本成果は、5月21日(金)に「J Clin Biochem Nutri」のオンライン版で公開されました(参考資料1)。この結果は、日常の食事の中で摂取するタマネギが、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つ可能性を示しています。

 今回の結果に基づいて、ケルセチンを関与成分とし、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つ機能等を表示する、生鮮タマネギの機能性表示食品の届け出を目指します。

<関連情報>
予算:生物系特定産業技術研究支援センター「「知」の集積と活用の場による革新的技術創造促進事業(うち「知」の集積と活用の場による研究開発モデル事業)」「脳機能改善作用を有する機能性食品開発」

問い合わせ先など                                 
研究推進責任者:
 農研機構食品研究部門 所長 亀山 眞由美
 北海道情報大学 学長 西平 順
 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学大学院医学系研究科 研究科長 中島 茂
研 究 代 表 者:
 農研機構食品研究部門 食品健康機能研究領域 研究領域長 小堀(こぼり) 真珠子
研究担当者:
 北海道情報大学 学長 西平 順
 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学大学院医学系研究科 教授 中川 敏幸
広報担当者:
 農研機構食品研究部門 研究推進室 渉外チーム長 萩原(はぎわら) 昌司
    TEL 029-838-8050 FAX 029-838-8005
       e-mail kohop-nfri@ml.affrc.go.jp
 北海道情報大学 健康情報科学研究センター 地域支援コーディネーター 伊藤 直仁
TEL 011-385-4430 FAX 011-385-4429
      e-mail clinical-food@do-johodai.ac.jp 
 国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学 管理部総務課広報係 井戸 雅俊
         TEL 058-293-3377 FAX 058-293-2021
e-mail kohositu@gifu-u.ac.jp
本資料は農政クラブ、農林記者会、農業技術クラブ、筑波研究学園都市記者会、江別市政記者クラブ、岐阜県政記者クラブ、文部科学記者会、科学記者会に配布しています。

※農研機構(のうけんきこう)は、国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構のコミュニケーションネーム(通称)です。

新聞、TV等の報道でも当機構の名称としては「農研機構」のご使用をお願い申し上げます。

開発の社会的背景と研究の経緯                              

 現在日本では、総人口に占める65歳以上の割合は28%を超えて増え続けており、このうちの15%以上は認知症と推定されています。認知症は生活習慣病とも関わりが深く、要介護に至る主な原因であることから、食生活を介した認知症予防や加齢に伴う認知機能低下の改善に期待がもたれています。しかし、日常的に摂取する農産物について、認知機能を維持する作用が示された例はほとんどありません。

 農研機構、北海道情報大学、岐阜大学の研究グループは、野菜や茶、果物等に広く含まれるフラボノイドの1種であり、タマネギに特に多く含まれるケルセチンが、認知機能の維持に役立つ可能性について検討を行い、今回、60-80歳の健康な方を対象とした介入試験により、タマネギに含まれるケルセチンの認知機能の維持に対する効果を調べました。

研究の内容・意義                                 

1.    ケルセチンを多く含むタマネギ(ケルセチン高含有タマネギ;本試験では「さらさらゴールド」3)を使用)、またはケルセチンを含まないタマネギ(白タマネギ4))の加熱粉末(図1)を、60-80歳の健康な方に24週間毎日摂取していただき、認知機能に与える効果を調べました。また併せて、認知機能低下と関連することが知られている抑うつ状態についても調べました。

2.    本試験では、60-80歳の認知症ではない健康な男女70人に、タマネギ粉末を1日1回11g(タマネギとして約120g(中玉の1/2個程度)、ケルセチンとして50mg)を24週間毎日摂取していただきました。ケルセチンは熱に安定であることから、調理等を含めて摂取方法は特に制限しませんでした。

3.    試験計画は北海道情報大学の倫理委員会で承認され、また試験は信頼性の高いプラセボ対照ランダム化二重盲検並行群間比較試験5)で実施しました。

4.    認知機能については、ケルセチン高含有タマネギを食べた人は、一般的な認知機能検査(ミニメンタルステート検査)の点数が、ケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取24週間後により大きく増加し、タマネギのケルセチンが認知機能の維持に役立つことが示されました(図2)。

5.    また、抑うつ状態については、ケルセチン高含有タマネギを食べた人は、iPadを用いた脳機能評価CADi26)の点数が、ケルセチンを含まないタマネギを食べた人に比べて、摂取24週間後により大きく低下し、タマネギのケルセチンが前向きな気分の維持にも役立つことが示されました(図3)。

6.    これらの結果から、日常の食事の中で摂取するタマネギが、加齢に伴い低下する認知機能の維持や前向きな気持ちの維持に役立つ可能性が示されました。

7.    本研究では、農研機構が試験食品の設計等を行い、岐阜大学が認知機能維持・改善に関わる作用を見いだしてメカニズムの検討を進め、北海道情報大学では健康な人を対象とした試験を実施しました。

今後の予定・期待                                

 今回の結果に基づいて、「ケルセチン」を関与成分とし、加齢に伴い低下する認知機能の維持に役立つ機能や前向きな気持ちの維持に役立つ機能を表示する、生鮮のタマネギの機能性表示食品の届け出を目指します。機能性表示が可能になれば、国産タマネギの付加価値を高め、農業と輸出も含めた関連産業の活性化に役立つと期待されます。

 本成果が、食生活を介した健康寿命延伸への一助となることを期待します。

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