タマネギのケルセチンは認知機能維持に役立つ
-ヒト介入試験で加齢に伴い低下する認知機能維持に役立つ機能を報告-
用語の解説
1) ケルセチン
野菜、果物、茶等に広く含まれるポリフェノールのうちのフラボノイドの1種で、黄色を呈します。
2) ミニメンタルステート検査(MMSE)
一般的に使用される認知機能検査。11の質問からなり、見当識、記憶力、計算力、言語的能力、図形的能力について口頭で質問し、被験者に回答させます。一般に23点以下を認知症の疑いとする(認知症疾患診療ガイドライン)ことから、今回は24点以上の方を対象として試験を行いました。
3) さらさらゴールド
“さらさらゴールド”は北海道で生産されており、市販されているタマネギの中でもケルセチンを多く含むタマネギです。一般的なタマネギはケルセチンを含む黄タマネギで、市販の黄タマネギのケルセチン含量を測定した結果は、可食部100gあたりおおむね10-50mgでした。
4) 白タマネギ
黄タマネギに対して、白タマネギはケルセチンを含まないため、比較対照として用いました。辛味が少なく水分が多くて、生食に向く、また違った特徴と魅力を持っています。
5) プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験
被験者を被験食品群(今回の試験ではケルセチンを多く含むタマネギの加熱粉末)と対照食品群(今回の試験ではケルセチンを含まないタマネギの加熱粉末)に二分し、どちらのグループに属しているかを関わるすべての人が知らずに行われる試験です。両群同時に同じ期間食品を摂取し、それぞれの結果を比較評価します。
6) iPadを用いた脳機能評価
iPadを用いた脳機能評価であるCADi2(Cognitive Assessment for Dementia iPad Version)。島根大学医学部と株式会社テクノプロジェクトが開発したiPad向けアプリケーションで、認知症の患者や健康な人の脳の検査に用いられます。試験には、認知症に関連して起こる周辺症状である抑うつ状態のスコア(Self-rating Depression Scale;SDS)による気分の評価も含まれます。40点以上が軽度のうつ傾向と判定されます。
※iPadはApple inc.の登録商標です。
参考資料
1. The effect of 24-week continuous intake of quercetin-rich onion on age-related cognitive decline in healthy elderly people: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group comparative clinical trial. Jun Nishihira, Mie Nishimura, Masanori Kurimoto, Hiroyo Kagami-Katsuyama, Hiroki Hattori, Toshiyuki Nakagawa, Takato Muro, and Masuko Kobori. J Clin Biochem Nutri. online 21 May 2021 1-13. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcbn/advpub/0/advpub_21-17/_article/-char/ja
2. 「タマネギの健康機能性」小堀真珠子 食品と容器 2021 62(3) 146-151.
参考図
A
(株)植物育種研究所提供
B
図1 ケルセチンを多く含むタマネギ“さらさらゴールド”(A)と
被験食品のタマネギ加熱粉末(B)(1日分11g、ケルセチンとして50mg)
図2 ミニメンタルステート検査(MMSE)による認知機能評価の結果
個人的な理由で中止した人等を除いて、摂取開始前(0週)、摂取12週間後、および摂取24週間後に検査を行いました。
(ケルセチンを含まないタマネギ33人、ケルセチンを含むタマネギ28人)
図3 iPadを用いた認知評価(CADi2)のうち、気分を評価する抑うつ状態に関するスコア
点数が高いほど抑うつ状態にあることを示しています。個人的な理由で中止した人等を除いて、摂取開始前(0週)、摂取12週間後、及び摂取24週間後に検査を行いました。
(ケルセチンを含まないタマネギ33人、ケルセチンを含むタマネギ28人)
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(2021/06/02 10:50)