治療・予防

温水洗浄便座で皮膚炎に
お尻の洗い過ぎ注意(辻仲病院柏の葉肛門外科 赤木一成部長)

 一般家庭にも広く普及した温水洗浄便座は肛門などを清潔に保てる上に使用後に気持ちまですっきりするが、使い方を誤ると、肛門周囲に皮膚炎が起こることもあるという。適切な使い方について、大腸肛門病の専門医である辻仲病院柏の葉肛門外科(千葉県柏市)の赤木一成部長に聞いた。

 ▽病原菌が大幅減少

 国内ではここ30年ほどで温水洗浄便座が急速に普及した。2020年内閣府調査によると、一般世帯の80%以上で使用されているという。

 メリットは局所の清潔を保てること。「排便後に温水洗浄便座を使って洗うことで、トイレットペーパーで拭くだけの場合に比べ、手指に付く病原菌の数が大幅に減ったとの研究結果が明らかにされています」と赤木部長は話す。

 さらに「痔(じ)の患者さんの多くが、温水洗浄便座のおかげで、紙で拭く回数が減り、拭くときの痛みが軽くなったと喜んでいます」というメリットもある。

 ▽皮膚バリアーが減少

 しかし、適切に使用しないと問題も起こる。温水洗浄便座のトラブルで最も多いのは、肛門周辺がかゆくなり、湿疹ができる肛門周囲皮膚炎だ。強い水圧や高い温度、長時間の温水洗浄で肛門周辺の皮膚のバリアー機能を担う皮脂が流される上、常在菌と呼ばれる菌のバランスが崩れて、細菌感染や便による炎症で発症すると考えられる。

 「肛門がかゆいから洗浄して治そうとする人もいますが、逆効果となります。また、便秘の人が洗浄水で肛門を刺激して排便を促そうとすることもありますが、習慣となって、洗浄しないと出ない状態になってしまいます。水圧が強いと切れ痔を起こす可能性もあります」

 お尻のトラブルを起こさない温水洗浄便座の使い方について、赤木部長は「温水洗浄はいいと思います。ただ、肛門周囲の皮膚バリアー機能を守るため、水圧を強くせず、ぬるま湯で10秒程度にとどめ、あとは軽く紙で拭き取るようにしてください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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