治療・予防

その尿漏れ、腹圧性尿失禁かも
~減量や訓練で改善も可能(東京女子医科大学東医療センター骨盤底機能再建診療部 巴ひかる教授)~

 無意識に尿が漏れてしまう尿漏れ(尿失禁)は、40歳以上の女性の4割強が経験しているという。このうち、ふとした拍子におなかに力が入り腹圧が高まって生じる腹圧性尿失禁が約半数を占める。東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)骨盤底機能再建診療部の巴ひかる教授に聞いた。

基本姿勢はあおむけだが、座っている時や立っている時も実行可能

基本姿勢はあおむけだが、座っている時や立っている時も実行可能

 ▽出産や肥満が原因に

 腹圧性尿失禁は、初めのうちはせきやくしゃみ、階段の上り下り、重い物の上げ下げなどで少量の尿が漏れる。重症になると、歩くだけで起きるようになる。原因はぼうこうや子宮、直腸などを下から支える骨盤底筋群が傷ついたり、ぼうこうにたまった尿が流れ出ないようにする尿道括約筋が弱まったりするため。これにより尿道が不安定になったり、尿道を閉じることが難しくなったりして尿失禁が生じるようになる。

 「骨盤底筋群に負荷がかかるのは妊娠や出産、加齢、体重増加(肥満)などです。特に肥満気味の患者さんに『最近太りましたか?』と尋ねると、半年で3キロや1年で5キロなど、急に体重が増えた患者さんが多いです」と巴教授は話す。肥満は本人の努力である程度はコントロールができるので、減量は尿失禁の予防や改善効果が期待できる。

 ▽骨盤底筋訓練の勧め

 全ての患者に巴教授が提案するのは、骨盤底筋訓練だ。あおむけを基本姿勢にして〔1〕足を肩幅程度に開いて膝を立て全身の力を抜き、肛門、膣(ちつ)、尿道を10秒ほど締め、30秒ほど休憩。これを10回繰り返す〔2〕同じように肛門、膣、尿道を締めたり緩めたりする動作を素早く10回繰り返す―を合わせて5セット、毎日続ける。「椅子に座っているときや、電車の中で立っているときでもできます。ちょっとした空き時間を利用するとよいでしょう」と巴教授。

 ほかの治療法には薬と手術がある。薬物療法は尿道を閉じる圧を高めるβ2アドレナリン受容体作動薬が用いられるが、重症患者には効果が期待できない。手術は尿道を支えるメッシュのテープを植え込む尿道スリング術がTVT方式とTOT方式の2種類あり、どちらも完治が望める。

 巴教授は「治療法については、そのメリットとデメリットも含め患者さんに説明します。どれを選ぶかは、ご自身の生活スタイルや希望を考慮して決めましょう」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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