治療・予防

新薬の選択肢が拡大―過活動ぼうこう
突然起こる強い尿意や尿漏れ

 我慢できないほどの急な尿意や、昼夜問わず頻尿の症状が表れる「過活動ぼうこう(OAB)」。常にトイレの場所を気にしたり、遠出を控えたりと、日常生活への影響が見過ごせなくなる例もある。東京女子医科大学東医療センター(東京都荒川区)骨盤底機能再建診療部の巴ひかる教授に、この病気の特徴や治療法について聞いた。

 ▽40歳以上の7人に1人が発症

 ぼうこうは筋肉でできた袋のような臓器で、脳からの指令により、尿をためる時には緩んで容量が大きくなり、排尿を意識すると収縮する。過活動ぼうこうではこの仕組みが乱れ、尿をためている途中でぼうこうが勝手に収縮(異常収縮)してしまう。そのため、我慢できない急な尿意を感じて、尿が漏れそうになる「尿意切迫感」、トイレに行くまでに漏らしてしまう「切迫性尿失禁」、「頻尿」(起きている間は8回以上、就寝後は1回以上が目安)といった症状が表れる。

 国内患者数は1040万人と推計され、40歳以上の人口の14.1%に上る。「女性では切迫性尿失禁を伴うことが多く、生活の質が低下します」と巴教授は解説する。

 原因はさまざまで、例えば脳血管障害、パーキンソン病などの脳疾患や、背骨を通る神経が圧迫される脊柱管狭窄(きょうさく)症などの神経疾患がある。また、男性であれば前立腺肥大による尿道の閉塞(へいそく)、女性であれば、ぼうこうや子宮が元の位置から下がってしまうぼうこう瘤(りゅう)や子宮脱など骨盤臓器脱による尿道の閉塞、ぼうこうや子宮を支える筋肉(骨盤底筋群)の筋力低下も原因となる。加齢によるものや原因不明のケースもある。

 ▽副作用が問題となる抗コリン薬

 過活動ぼうこうの治療に使われる薬剤には、ぼうこうの異常な収縮を抑える「抗コリン薬」、ぼうこうを広げて尿をためやすくする「β3アドレナリン受容体作動薬」などがある。

 抗コリン薬は、副作用として口内乾燥、便秘などのほか、認知機能低下やせん妄を引き起こすことがあり、高齢者への投与は注意が必要とされている。過活動ぼうこう以外の病気の治療薬にもこうした抗コリン作用が含まれることがあるため、重複使用により副作用が強く表れる点には注意が必要だ。

 β3アドレナリン受容体作動薬は、ミラベグロンという薬剤に加え、2018年11月に新薬ビベグロンが発売された。β3アドレナリン受容体作動薬は抗コリン薬と比べて、服用する薬の種類が多い高齢者では使いやすい。ミラベグロンは生殖可能な年齢への使用は極力避ける必要があるが、ビベグロンにはその必要がない。

 原因となっている病気が明らかな場合は、原疾患の治療により改善が期待できる。男性なら前立腺肥大症の治療、女性なら骨盤臓器脱の治療や骨盤底筋訓練を行うことで、過活動ぼうこうの症状も落ち着くことが多い。(メディカルトリビューン=時事)


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