治療・予防

男性も悩む尿失禁
症状に応じて治療や対策を

 尿失禁(尿漏れ)は女性特有の悩みと思われやすいが、中高年の男性にも増えている。高齢化に伴って前立腺肥大症前立腺がんなどが増加していることが背景にあるとされる。埼玉医科大学病院(埼玉県毛呂山町)の朝倉博孝教授は「前立腺がんの手術で前立腺を全摘出した後、尿失禁で悩む方が増えています」と指摘する。

中高年の男性に尿失禁が増えている

中高年の男性に尿失禁が増えている

 ▽原因さまざま

 尿失禁はその症状により、主に腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流(いつりゅう)性尿失禁、機能性尿失禁の4種類に分けられる。腹圧性尿失禁は、重い物を持つなどして下腹部に力が入ると、ぼうこうが圧迫されて尿が漏れるという症状だ。女性に多いが、最近は、手術で前立腺を取り除いた男性にも増えている。手術で前立腺周辺の神経や筋肉が傷つき、尿道が閉まらなくなる。

 急に強い尿意に襲われて、トイレまで間に合わず漏れてしまうのが切迫性尿失禁だ。ぼうこうの活動が過敏になる過活動ぼうこうや、前立腺が肥大して尿道が圧迫されて狭くなる前立腺肥大症が原因だ。溢流性尿失禁になると自分で尿を出すことが難しくなり、ぼうこうにたまった尿が少しずつ漏れてしまう。前立腺肥大症の人に多く、ほっておくと腎臓に負担を掛け、腎盂(じんう)炎に進行する可能性がある。

 機能性尿失禁は、認知症などの神経疾患や身体運動機能の低下により、トイレに行くまでに失禁してしまう。尿漏れ用パッドの使用など、介護や生活環境の見直しを含めた対処が必要となる。

 ▽排尿日誌が活躍

 自分の症状を知るためには「排尿日誌」をつけることが効果的だ。排尿した時間や回数、尿の量を毎日記録することで、多尿かどうかなどが分かり、飲水制限などの対処法も見えてくる。

 腹圧性尿失禁の治療として行われてきた「骨盤底筋体操」が、切迫性尿失禁や過活動ぼうこうにも有効であることが分かってきた。また、症状ごとに薬物療法もある。

 水をたくさん飲むことが必ずしも健康に良いとは限らない。朝倉教授は「水の飲み過ぎは尿失禁の回数を増やす原因になるので注意しましょう」とアドバイスする。理想的な1日の尿量(CC)は「体重(キロ)×30」が目安だという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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