治療・予防

女性の骨盤臓器脱
まずは保存的治療から(大阪市立大学大学院医学研究科女性生涯医学特任教授 古山将康医師)

 骨盤内の臓器が腟(ちつ)から体外に出てしまう骨盤臓器脱は、その臓器により、子宮脱、ぼうこう瘤(りゅう)、直腸瘤などに分類でき、複数起こる場合もある。「手術で治すこともありますが、命に関わる病気ではないので、保存的治療から始めるのが原則です」と大阪市立大学大学院(大阪市)医学研究科女性生涯医学特任教授の古山将康医師は話す。

手術にはさまざまな種類がある。最適な方法の選択を

手術にはさまざまな種類がある。最適な方法の選択を

 ▽出産や加齢が原因に

 子宮、ぼうこう、直腸などの骨盤内臓器は、骨盤底筋や靱帯(じんたい)などに支えられている。しかし、妊娠や出産で支える部位が損傷を受けたり、女性ホルモンの減少で骨盤底筋の筋力が低下したりすると、支えが緩み、臓器が腟に下がり、やがて脱出する。慢性的な便秘やせき、肥満、立ち仕事など腹圧がかかりやすい状況が助長する。

 「股の間からピンポン球のようなものが出てきた」「ヌルっとしたものに触れた」「股に何か挟まっているような異物感がある」などで気付くことが多い。ぼうこうが下がると頻尿、尿が出にくい、漏れる、直腸が下がると便が出にくいといった症状も表れる。

 ▽手術の選択は慎重に

 最初のうち、臓器は腹部に力を入れると出るが横になると戻る感覚がある。しかし、一度下がると自然に元に戻ることはなく、生活に支障を来せば治療が必要となる。「脱出する臓器や程度は支えの緩み具合で決まります。それを診察で確認すれば、重症度や対処法などがほぼ確定します」

 臓器の脱出が腟の出口から1センチまでなら、助長する要因の改善とともに骨盤底筋体操を行う。1センチを超えれば、リングペッサリーという医療機器の装着が必要となり、効果がなければ手術を検討する。

 手術では腟を縫うが、どこをどれぐらい縫うかは、支えの緩む場所や程度で異なる。縫うだけでは不十分な場合は、腟と臓器の間にメッシュを入れたり、腟を持ち上げたりする。妊娠や出産、性交渉の必要がなければ、腟を閉じる方法もある。

 一口に手術といっても方法はさまざま。古山医師は「手術が必要と言われた場合には、各手術のメリット、デメリットについて十分な説明を受け、自分のライフスタイルを考慮して、最適な方法を選んでください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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