歯学部トップインタビュー
道内最大規模の医療系総合大学
~データに基づいた説得力ある指導を―北海道医療大学歯学部~
◇海外臨床研修・実習や歯科医学研究の科目を設け、学修意欲に応える
国際交流にも力を入れており、年間十数人が1~2週間の海外での研修や実習に参加する。米国、スウェーデン、ドイツ、フランス、ポーランド、韓国、台湾、ネパール、バングラデシュ、インドネシア、マレーシア、タイなどに22の提携校があり、短期交換留学を行っている。
また、3~5年生の希望者を対象に歯科医学研究の科目を開講し、研究マインドの醸成を行っている。優れた研究成果が得られた場合は、日本歯科医師会が主催するSCRP(スチューデント・クリニシャン・リサーチ・プログラム)で発表する。
「優勝すると米国で発表の機会を与えられるので、積極的に参加する学生も多いです。歯科医学研究を履修した学生は大学院に残って、そのまま教員になる場合もあります」
歯科ユニットの水回りの除菌法を開発したり、二酸化炭素濃度の測定器を自分たちで組み立て、製品化までこぎ着けたりした学生のグループもあるという。
「二酸化炭素濃度の測定器は室内換気の目安が分かるので、特にコロナの時期、とても有用です。大学内にも各部屋に置いていますし、多くの同窓の歯科医院の先生方が購入して使っています」
インタビューに答える古市歯学部長
◇スウェーデンでデータの重要性を学ぶ
古市歯学部長は鹿児島県・種子島の出身。当時、町には歯科医がおらず、町の診療所の所長だった父親から、町で足りない歯科医になるという希望を託された。鹿児島大学歯学部に進み、卒業後は縁あって5年間、茨城の開業医に務めた。そこでスウェーデンの歯周病学・歯周治療学の大家であるヤン・リンデ教授と出会い、そのつながりで同国に留学。イエーテボリ大学で計8年間研究に取り組み、学位を取得した。
「1988年当時、日本では経験のある歯科医師が経験を基に提唱した治療法を選択することが一般的でした。臨床的なデータに基づいて治療を選択するEBMをいち早く取り入れ、さらにそのデータ構築に貢献したのがイエーテボリ大学です。とても理論的で、データを解析し、そのデータに基づいて最適な治療法を選択することの重要性を学びました。このようなデータに基づいた方針の決定と提示は、患者さんに治療方針を説明するときのみならず、学生に弱点克服のための指導を行う際に説得力があります」
鹿児島に戻った後、鹿児島大学に勤務。2004年に北海道医療大学の教授に採用され、現在に至っている。
「大学のある当別町はスウェーデンのレクサンド市と姉妹都市で、町内の多くの場所にスウェーデンにちなんだものがあります。不思議なご縁ですね」
南国から北国に移り住んで20年になる。「12月末から3月の3カ月を我慢すれば、あとは天国です。梅雨はないし、暑くもない。とても住みやすい町だと思います」
◇歯科医師の未来は明るい
古市歯学部長は歯科医師という職業について明るい見通しを示す。
「数年前から『歯科医院はコンビニより多い』などと報道され始めましたが、それ以前も歯科医院がコンビニより少なかったことはなく、話題性を追求した表現だと思います。今後、多くのベビーブーマー世代である歯科医師のリタイアを控えているので、歯科医師が足りなくなる可能性は否定できず、実際、現時点でも若手の歯科医師の求人は多くあります。特に地方ではそれが顕著です。一方、在宅医療を推進するには訪問診療がもっと重要になるでしょう。口腔(こうくう)内の健康が全身の健康にも影響することが分かってきています。虫歯を削って詰めるだけではなく、国民皆歯科検診などによって全国民の口腔内状況を把握し、その結果に応じた治療や予防への取り組みを実践することも重要です。歯科医師は将来性のある職業です。『歯科医師になりたい』というやる気のある学生に、ぜひ来ていただきたいと思います」(ジャーナリスト/中山あゆみ)
古市保志(ふるいち・やすし) 1985年鹿児島大学歯学部卒。98年スウェーデン・イエーテボリ大学で歯学博士取得(Odont.Dr.)。鹿児島大歯学部助教、同学部附属病院講師、歯学部助教授を経て2004年北海道医療大学歯学部教授。09年から同大学歯科内科クリニック(現歯科クリニック)院長を兼務。19年4月から歯学部長。
【北海道医療大学歯学部 沿革】
1974年 学校法人東日本学園大学を設立
薬学部を開設
78年 歯学部を増設
歯学部附属病院を開設
84年 歯学部附属歯科衛生士専門学校を開設
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(2023/05/24 05:00)
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