夏は血圧低下に注意=降圧剤減らす必要も-横尾隆医師
動脈硬化を招き、脳卒中や心筋梗塞などのリスクを高める高血圧症。加齢によって動脈硬化が進むため、社会の高齢化で降圧剤による治療を受けている人は増えている。ただ、夏は発汗などによる体内の水分や塩分の減少が一部の薬剤の効き目を強めてしまい、結果的に一時的な低血圧状態を招く危険があることは、あまり知られていない。東京慈恵会医科大付属病院(東京都港区)腎臓・高血圧内科の横尾隆教授は、「家庭でもこまめに血圧を測定し、一定以上血圧が下がり続けている場合は、医師の指導の下で降圧薬の種類や量を減らしたり、服薬をやめたりすべきだ」とアドバイスしている。
◇体内水分量が左右
血圧を下げる薬は多い。このうち、排尿量を増やして血圧を上げる作用のあるナトリウムの体内量を減らす利尿剤や、体内で分泌され血圧をコントロールするレニンという物質の活性を上げるARBやACRという薬は、体内の水分量に左右されやすい。発汗などにより体内の水分量が減っている状態で排尿量が増えれば、結果的により水分が減少して血圧が下がりやすくなる。レニンも体内が脱水傾向に陥ると活性化し、より強い血圧低下が起きる。
「このような状態で、他の季節と同じ量の薬を服用していれば、血圧も通常より大きく低下する可能性が高まる。安静にしての血圧測定では問題が出ない数値でも、急にベッドから起き上がったり入浴中に湯船から立ち上がったりする場合に過度の血圧低下が生じ、昏倒(こんとう)や気絶、脳梗塞の発作を誘発する危険性が高くなる」
◇変化しやすい血圧
横尾教授が心配するのは、血圧は動作の激しさや動作を起こす前の姿勢などによっても変化が激しく、測定によって確認するのが難しいからだ。例えば椅子から立ち上がった際に低血圧を起こして転倒した場合でも、倒れて横になることで血圧が上昇し、正常血圧に戻ってしまうことも少なくない。「糖尿病治療では、低血糖状態で起きる転倒などのリスクには慎重に対応しているのに比べ、高血圧症の治療では低血圧への警戒の度合いが低いのが現状だ」と言う。
(2017/06/23 15:02)