治療・予防

1種類追加で生存率高く
~局所進行食道がん、術前化学療法(国立がん研究センター中央病院 加藤健科長)~

 食道がんを切除する前に抗がん剤でがんを小さくしておく化学療法について、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)の研究により、従来の2種類の抗がん剤にもう1種類を加えると生存率が高くなることが確認された。同病院頭頸部・食道内科・消化管内科の加藤健科長に研究成果を聞いた。

DCF療法とCF療法における5年生存割合の比較

DCF療法とCF療法における5年生存割合の比較

 ◇進行後に見つかる

 食道がんは「初期に食道がしみる感じなどの違和感や胃の不快感がありますが、多くは症状がなく、進行後に見つかるケースがほとんどです」。進行すると、食べ物がつかえる感じ、背中の痛み、声のかすれなどが現れる。治療から5年での生存率が約40~45%で、約70%の大腸がんなど他の消化器がんに比べて低い。

 加藤科長によれば、食道がんの6割は局所進行がんで、2割は食道周囲または離れた臓器に転移のある進行がんだという。局所進行食道がんの場合は、切除可能であれば予後を改善できる可能性が高い。

 ◇3年・5年生存率が向上

 切除可能な局所進行食道がんの術前化学療法として以前は、「シスプラチン」「5―FU」という2種の抗がん剤を併用する「CF療法」が標準治療とされてきたが、現在はより強力な「ドセタキセル」を加えた3種併用の「DCF療法」が取り入れられている。欧米では、CF療法に加えて放射線治療を行う「CF+RT療法」が標準治療になっている。

 加藤科長らは約600人が参加した全国規模の共同臨床試験を行い、DCF療法、CF+RT療法の有効性と安全性をCF療法と比較した。その結果、3年生存率は▽DCF療法が72.1%▽CF療法が62.6%、5年生存率は▽DCF療法が65・1%▽CF療法が51・9%―で、DCF療法の方が共に高かった。ただし、DCF療法は、血液細胞を作る機能が低下する副作用の頻度がCF療法より高率だった。

 CF+RT療法の生存率はCF療法と統計的に差がなかった他、肺炎、心臓病など他の病気で亡くなる人が多かった。

 日本では、この研究の中間結果が発表された2022年にDCF療法が標準治療になった。「DCF療法の効果は高く、開始後数日でがんが縮小する患者もいます。一方で、白血球が減ったり、食欲が落ちたりするなど副作用はそれなりに強いので、高齢者や臓器機能が低下した患者には、CF療法も選択肢の一つになっています」と加藤科長は説明する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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