接着剤によるやけど
~付け爪用など、高温に(弘前大学医学部付属病院 漆館聡志教授)~
国民生活センターは、付け爪用などの瞬間接着剤によるやけどが相次いでいるとして注意喚起している。一般的な瞬間接着剤の主成分であるシアノアクリレートは、ティッシュペーパーや布などに染み込むと発熱し、やけどする恐れがある。弘前大学医学部付属病院(青森県弘前市)形成外科の漆館聡志教授は「瞬間接着剤は特定の条件下で発熱し、深いやけどを負う危険もあるため、取り扱いに十分注意してほしい」と話す。
瞬間接着剤を服にこぼした場合の対処法
◇ティッシュで発熱
国民生活センターには、主に付け爪用の瞬間接着剤で手指や太ももにやけどをしたという相談が、2019年からの5年間に7件寄せられた。こぼした瞬間接着剤をティッシュで拭き取ったり、衣類に付着したりした部分が発熱したためで、2度のやけどで約1カ月の通院を要したケースもあったという。
やけどは、1~3度に分類される。「1度は表皮まで、2度はその下の真皮まで、3度は皮下組織まで傷が及びます。2度は水膨れができるのが特徴で、浅い2度は通常1~3週間で治ります。深い2度は1カ月ほどかかり、傷痕のひきつれや盛り上がりなど後遺症が残るケースがあります」
国民生活センターによる再現テストでは、物用、付け爪用のいずれも、液状で粘度が低いタイプの瞬間接着剤は、ティッシュや綿などの衣類に染み込ませた場合、十数秒で最高170度近くまで温度が上昇した。また、瞬間接着剤はすぐに硬化するため、発熱時には付着部分を容易にはがせないという。
◇すぐに流水で冷やす
瞬間接着剤を使用する際には、ティッシュや衣類など繊維質の物に染み込ませないよう十分に注意が必要だ。使用中に誤って衣類にこぼした場合は、発熱の恐れがあるため流水で冷やす。手指など皮膚に付着させた場合は、発汗作用によってはがれるので慌ててティッシュで拭き取ったりせず、40度くらいのお湯の中でもむようにはがす。
「やけどした場合は、直ちに流水で患部を冷やすことが大切です。水膨れができたら、なるべく早く皮膚科や形成外科、救急外来などへの受診を勧めます」
浅いやけどのほとんどは軟こうや創傷被覆材による治療で治るが、深い2度、3度のやけどは、皮膚移植などの手術が必要になるケースもあるという。
漆館教授は「手指の深いやけどは皮膚のひきつれなどで機能障害が残るリスクもあります。家具などにこぼした瞬間接着剤を布などで拭き取る際は、ポリエチレン手袋をして安全に行いましょう」と助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/12/09 05:00)
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