特集

低栄養が招く衰弱、筋肉減少
「フレイル」「サルコペニア」の恐怖


 ◇63歳でピンチ

 記者は63歳。身長は174センチほどだが、不摂生がたたり体重は50キロを割っている。記事に添える写真のモデルとなり、羽生教授に診察してもらった。二の腕の裏側の筋肉をつまんだり、両手の親指と人さし指を合わせて輪を作ってふくらはぎの最も太い箇所に当てたりする。後者では、作った輪から少しはみ出す程度のふらはぎの太さが目安になる。記者の場合はスカスカ。「サルコペニアだね」。診断は迅速だった。

 記者のような事例はもちろん、老年医療の対象にならない50~60代でプレフレイル、プレサルコペニアに陥っている場合は問題だ。放置していれば加齢による活動量や身体機能の低下が加わって本格的なフレイルやサルコペニアに移行し、持病の改善も身体機能の回復も難しくなる。本来なら医師の治療が必要になるが、この段階で治療に携わる専門医や日常の健康管理を担う地域のかかりつけ医の間では、フレイルやサルコペニアに対する認知度はまだ不十分で、治療が受けにくいこともある。

 羽生教授は「高齢患者が増えてきた分野では、この問題に関心を向ける専門医も増えてきた。しかし、他の領域は目の前の病気の治療で手いっぱいの状態だ」とした上で、「老年医学を専門とする側からみれば、50~60代でプレフレイルやプレサルコペニアを発見しても、その患者を受け入れて適切な指導ができる診療科がほとんどない、これが最大の問題だろう」と課題を挙げた。


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