特集

低栄養が招く衰弱、筋肉減少
「フレイル」「サルコペニア」の恐怖


 ◇「キョウイク」と「キョウヨウ」

 タニタヘルスリンクの管理栄養士・健康運動指導士の龍口知子さんは「低栄養はフレイルの原因の一つだ。外出するのが嫌になる。すると、おなかが減らないから、食べる量が減る。外出するのか、家に閉じこもるのかは健康に密接に関わっている」と話す。

 龍口さんら同社のスタッフが自治体や企業を対象に開催する健康セミナーで繰り返す言葉がある。「キョウイク」と「キョウヨウ」だ。「教育」と「教養」ではない。「キョウイク」は、きょう行く所がある。「キョウヨウ」は、きょうは用事がある―という意味だ。「外出の機会があったり、他人とのコミュニケーションが保たれていたりすることが大事だ。自治体などが開催する健康維持や介護予防のための教室に参加することはとてもよいことだ」

 ◇10種類の食品を

 龍口さんは「高齢者にとってなかなか取りにくいかもしれないが、取ってほしい食品群のチェックリストがある」と言い、10種類の食品を挙げる。10種類は、①卵②肉類(ソーセージやハムを含む)③魚介類④大豆製品⑤牛乳や乳製品⑥カボチャやニンジン、ホウレンソウなどの緑黄色野菜⑦ワカメやヒジキ⑧果物⑨イモ類⑩油脂―だ。「①から⑤はたんぱく室を摂取することで筋肉をつくる。⑥から⑧の食品は、ビタミンとミネラルが豊富。⑨と⑩はエネルギー源となる」と言う。

 この食品一つを1週間で4、5回食べている場合は、「1点」とカウントする。龍口さんは「合計で9~10点を取ることができれば、生活の質(QOL)が高いと言える。大変かもしれないが、カレンダーに書き込んでチェックするなどして、点数を上げてほしい」と力説する。

 運動面では、無理のないペースで毎日、歩くようにすることだ。「『きょうは○○歩』といった目標を掲げても、なかなか実行できないが、それは当たり前だと思ってほしい。『きょうはきのうより多く歩いた』『きょうは少し足りない』という意識を持ってもらえたらよい」

 筋肉トレーニングなども有効だが、龍口さんはお金のかからない方法も勧める。「駅では、エスカレーターではなく、できるだけ階段を使う。ショッピングセンターに行った時は、駐車場の最も遠い場所に自動車を止め、店舗まで長い距離を歩く」。お金がかからない健康法だ。(鈴木豊、喜多壮太郎)


用語説明「フレイル」
 欧米などの老年医学分野で使われる「FRAILTY(フレイルティ)」に対応する用語で、日本老年医学会が2014年から提唱。「加齢に応じて運動機能や認知機能などが低下して生活機能が傷害され、心身両面での衰弱がみられる状態」と定義する。一方で、「外部からの適切な介入・支援があれば、支障なく日常生活が送れるようになる」としている。


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