医学生のフィールド

救急医療を見て、やって、教えて学ぶ
~東京医科歯科大「TESSO」~

 東京医科歯科大学公認の救急医療勉強サークル「TESSO (Tokyo Medical and Dental University Emergency Medicine Study Session Organized by students)」は、今年で創設13年目。

 「目の前で患者さんが急変したら、その場ですぐに適当な処置を取れるようにしよう」という実践的な運営方針を掲げ、一人ひとりが日々、精力的に活動している。

 部長の臼井綾香さんと副部長の高橋周平さん(ともに医学部5年)に、救急医療に対する熱い思い、今後の活動に対する展望を聞いた。

(聞き手・文 医療ライター・稲垣麻里子)

 ◇最大イベントはカリスマセミナー

 ――TESSOの創設当初のことを教えてください。

 臼井さん TESSOという名で始動したのは2007年ですが、その前身として、1991年からACLS*1勉強会という個人的な勉強グループがありました。

部長の臼井さん

 2006年に大友康裕教授が本学のER(救命救急センター)に赴任したのをきっかけに、顧問に就任し、翌年からTESSOとして本格稼働しました。

 当時、ちょうど日本の救急体制が整ってきていて、全国のあちこちで救急の勉強会やサークルが立ち上がってきた頃です。


 ――どのような活動をしていますか。

 臼井さん 1年を通しての最大の活動は、東京医科歯科大のERが主催する「目指せカリスマ救急医!夏季セミナーin医科歯科」というイベントです。全国の医学部に所属する5、6年生の中から参加希望者を募り、ICLS*2JATEC*3のコースを開催しています。

 われわれが掲げている「救急医を目指す」という目標の下に、実際の救急患者を目の前にしたときに、どのような処置をすればいいのか。救急医に要求される全般的な知識を、2日間かけて詰め込むセミナーという形を取っています。

 セミナーの内容として、主にシミュレーショントレーニングを行っており、BLS*4のみならず、その後の院内処置に当たる気管挿管*5や薬剤投与の練習もシミュレーターを用いて行っています。

 また、外傷患者の処置の練習については、TESSOの部員が患者に扮(ふん)し、救急医役の学生の処置に応じて呼吸数などの演技を変え、患者さんに対してするのと同じ方法で測定、評価してもらうことで、練習効果を上げています。

 *1:ACLS=2次救命処置。病院等の医療機関での救命救急における心肺蘇生法。
 *2:ICLSコース=医療従事者のための蘇生トレーニングコース。特に「突然の心停止に対する最初の10分間の対応と適切なチーム蘇生」の習得が目標。

 *3:JATECコース=外傷診療に必要な知識と救急処置を、模擬診療を介して学習することにより、「外傷初期診療ガイドライン」に基づいて、標準初期診療手順が実践できるようになることを目標としたトレーニングコース。
 *4:BLS=呼吸が止まり、心臓も動いていないとみられる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置。胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法、そしてAED(自動体外式除細動器)の使用を主な内容とする。
 *5:気管挿管=口または鼻から喉頭を経由して気管内チューブを挿入する気道確保方法。救急現場では、特に心肺停止患者の気道確保によく用いられる。


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