医学生のフィールド
救急医療を見て、やって、教えて学ぶ
~東京医科歯科大「TESSO」~
――TESSOと、他大学の救急サークルとの違いはなんですか。
臼井さん ERの大友教授は、救急の中でも外傷が専門分野ですので、JATECという外傷のコースをメーンに勉強できるところがTESSOのユニークな点だと思います。
JATECの正式な資格を取得できるのは、医師免許を持つ医師のみですが、コースの様子を見学させてもらったり、TESSOの一大イベントであるカリスマセミナーにおいて、プライマリーサーベイ*6の簡単なレクチャーを実施したりしています。
*6:プライマリーサーベイ=外傷による重症者に対して、生命維持のための生理機能を迅速に評価し、必要な治療を直ちに開始する一連の手順のこと。気道、呼吸、循環の順に評価し、それぞれの段階で異常があれば、気道確保や胸部外傷に対する処置、輸血などを行い、極めて迅速に気道、呼吸、循環の安定化を図る。
――TESSOに入ろうと思ったきっかけは。
高橋さん 私はもともと子供の救急に興味があって医学部に入りました。
TESSOには、先輩に誘われて、1年生の時に入ったのですが、そこで救急はいろんな医学の領域につながっていて、統合的に見て、考える力を要する分野だということが分かり、より関心が高まりました。
カリスマセミナーで5、6年生にICLSを指導
低学年のうちから、この視点が得られることは、とても大事だと思います。
臼井さん 私自身は特に救急志望ではなく、なんとなく医学っぽいことをやってみたいと思い、入部しました。
入部してみて、実際に体を動かしたりして、後輩への指導に重点を置くTESSOの方針に魅力を感じました。
低学年のうちから急性期について学ぶことで、全身に対する理解が深まります。
先輩方がとても勉強熱心なので、新しいことを勉強する人や、外部に積極的に出て、そこで得た知識を部内に持ち帰って、共有してくれたりするので、大変に刺激になります。
◇学園祭で医学部長賞
――今後の展望をお聞かせください。
臼井さん 他大学との交流を増やしていきたいです。部員たちが「学生メディカルラリー」などの全国の大会で素敵なつながりをつくってくれているので。
高橋さん 社会貢献ができたらと思っています。私が関わっている「PUSHプロジェクト」もですが、医学生って、医学を勉強する機会はすごく多いけれど、医師免許を取るまで知識を生かす機会って、あまりないんです。
なので、一般の方向けの救命処置セミナーを開いたりしていきたいです。現在は、東京医科歯科大学の学園祭である「お茶の水祭」でも、似たようなセミナーを実施しています。
――昨年のお茶の水祭では医学部長賞を受賞されましたね。
臼井さん そうなんです。一昨年まではBLSの体験がメーンでしたが、昨年度はICLSの実演と展示を行いました。
一般の方からしたら、院内での心停止現場って、まさにブラックボックスだと思うので、その領域を分かりやすく展示するよう心がけました。
また、災害時に使われるトリアージ*7に関するクイズの展示などもしました。
おかげさまで、TESSO史上、最も多くのお客様にお越しいただけました。(記事の内容、肩書などは取材当時のものです)
*7:トリアージ=患者の重症度に基づいて、治療の優先度を決定して選別を行うこと。災害等の現場では患者の身体に重症度が高い順に黒、赤、黄、緑のカードをつけ選別する。
(2019/05/16 11:57)