話題 2024/12/19 05:00
マウスピース矯正、ここに注意!
~トラブル増で専門家警鐘~
新型コロナウイルス感染症の流行本格化以降、持病の経過観察などのため医療機関の受診を控えてきた人も少なくない。薬などはオンラインの遠隔診療で処方を受けることが可能になったが、病状の変化などは、なかなか対応しきれない面もある。また、がんのような進行性の病気は早期の治療が必要だが、受診抑制や手術件数の減少で手術が遅れてしまう問題や、検診を受けられずに発見が遅れる危険性も指摘されている。
待合室や受付では受診者同士の感染が心配された=慈恵医大晴海トリトンクリニック提供
◇腎臓にダメージ
「新型コロナウイルス感染症は肺だけでなく、全身の血管を障害させることにより多くの臓器を傷害させることが明らかになってきた」
慈恵医大晴海トリトンクリニック(東京都中央区)所長で患者の行動変容に詳しい横山啓太郎同大教授(腎臓高血圧内科)は、これまでの経緯を振り返った上でこう話す。
「腎臓も、新型コロナ感染症によって障害を受ける代表的な臓器だ。慢性腎臓病は新型コロナ感染症で重症化するといわれる高血圧や糖尿病を合併している比率が高いので、注意が必要だ。透析患者は、週3回、同じ空間に4~5時間は滞在するため、感染リスクが高いが、人工透析は中断もできない。実際に院内感染の発生が報告されていた」
◇高齢者の熱中症
横山教授はさらに、「暑くなるにつれて、課題は増えてくる」と指摘する。脱水状態に気を付けなければならない。慢性腎臓病患者は腎機能が低下し、水分摂取が制限されると、熱中症のリスクが高くなるからだ。
横山啓太郎教授
マスクを着けていると喉の渇きを感じにくくなり、水分を小まめに補給しなくなりやすい。感染に注意しながらの水分補給が大切だ。とにかく、現在の自分の病状を把握してもらう必要があり、このためにはかかり付け医の診察を受けなければならない。
高齢者の熱中症は外よりも自宅で起きることが特徴の一つだ。新型コロナウイルスによって高齢者が自宅にとどまる機会が増えた。一方、現役世代はこれを機会に健康リテラシーを上げる必要がある。
「現役世代は、新型ウイルスの感染拡大で自宅待機が呼び掛けられているので、自覚していないが通勤の際の活動量が低下している。スポーツジムへ通うなどの習慣が失われている心配もある。通勤は知らず知らずに行っていた運動習慣であることも忘れてはならない」と横山教授は指摘する。
さらにリモートワークは座りっぱなしになりやすい上、手持ち無沙汰になって間食や飲酒量が多くなることに注意を払う必要がある。特に、梅雨や夏に向かっては意識的に外に出てウオーキングやジョギングをしないと活動量は著しく低下する危険性が高くなってしまう。
がんの早期発見に欠かせない検診=中川恵一准教授提供(一部加工)
「在宅勤務や外出の自粛で生活習慣が全く変わってしまった人も多いだろう。習慣が変化すると運動量の低下、食事量の増加により体重増加を引き起こしている可能性がある。また、オンラインの遠隔診療では自分の投薬内容を知ることが大切である。例えば、血圧を下げるアンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬を服用する患者は、夏には血圧が下がりすぎる傾向があるので血圧の変化にも注意が必要で、必要なら夏前に一度は診察を受けてほしい」と、課題を列挙する。
◇深刻な進行性がん
より深刻なのが進行性で、結果によっては生命の危険が高まるのがんの領域だ。早期に発見して、手術や放射線照射でがんの腫瘍を切除・消失させるのが治療の基本。しかし、新型コロナ感染症の重症者に対応するため集中治療室の使用が制約され、緊急を要しないとされる手術は先送りされている医療機関が少なくない。
中川恵一准教授
東京大学医学部付属病院(東京都文京区)の中川恵一准教授(放射線科)は「がん細胞は理論的には短時間でも放置すれば、増殖する。外科手術と同様の効果が認められている子宮頸(けい)がんや前立腺がんについては、制約を受けない放射線治療に切り替える事例も増えている」「入院の必要もなく、患者への負担も少ない放射線治療の特長が、このような状況下でより評価されているのではないか」と話す。
その一方で、「春に多い各企業や自治体のがん検診はもちろん、そこで疑問点が出た人が医療機関で受ける精密検査も、新型コロナ騒動で中止や延期が相次いでいる」。
「現在の日本でのがんによる死者は年間38万人に上る。検診の遅れや未受診で仮に1%増加するだけで3800人の増加につながり、新型コロナウイルスのこれまでの死者を上回ってしまう」と中川准教授は危惧する。その上で「新型ウイルスの流行が下火になった夏にこそ、春までの検診未受診者のフォローと、流行再燃が危惧される秋以降の検診の繰り上げ実施に早急に取り組む必要がある」と力説する。(喜多壮太郎・鈴木豊)
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