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新型コロナウイルス感染症がピークを越えたかに見え、緊急事態宣言が解除されたが、ウイルス感染の危険が去ったわけではない。特にこのウイルスが引き起こす肺炎は、病状進行の著しい早さや症状の激しさなど、その特異性のために治療に難しい面がある。実際の治療を担当した専門医に聞いた。
新型コロナウイルスに感染、肺炎を発症した患者のCT画像(昭和大学提供)
◇あっという間に危険な状態
「まず、新型コロナウイルスによる肺炎は、一般的な肺炎=用語説明参照=に比べて症状が悪化するスピードがとても早い。少しでも病状の判断が遅れたりすると、あっという間に入院が必要なほどに悪化してしまう」
昭和大学病院(東京都品川区)呼吸器内科教授として治療の最前線に携わってきた相良博典同病院院長は、この肺炎の特徴をこう説明する。
症状自体はせきや発熱に始まり、息苦しさや呼吸困難に進む過程は同じだ。ただ、新型コロナウイルスの場合は息苦しさを訴えてから数時間で人工呼吸器が必要な状態に進行してしまうことが少なくない、と相良院長は指摘する。
異常がない状態の肺のCT画像
同時に「在宅療養中に病状が急変して亡くなったのは、このような状態に襲われたのではないか」と推測。症状が安定しているように見える患者でも、医療関係者の見守りを受けられ、緊急時の対応が可能な医療機関か療養施設に入ることが望ましい、としている。
◇患者が苦しさ訴えないケースも
炎症の広がりかたにも特徴がある。
「細菌などで起きる肺炎は左右どちらかの肺の入り口といえる気道周辺から炎症が起きるが、この感染症では、左右両側同時に、肺の奥の方まで一気に炎症が広がることが多い。このような状態は通常の肺炎なら発病から3~4日過ぎてから出てくるが、この病気では1~2日で症状が出てきてしまう」と相良院長は言う。
相良博典院長
危険なのはこのような病状になっても、患者本人が病状に相当するほどの苦しさを訴えないケースが多い点だ。「感染を判断するPCR検査や患者への問診だけでは、急変の兆候がなければ『軽症』と診断されてしまう。このような患者が自宅療養となって病状が急変すると、今の医療体制では対応しきれない」
治療現場では「息苦しさ」を患者が訴え始めたら、できればすぐに胸部CT検査、少なくともX線検査をして肺の状態を把握することが、その後の治療を大きく左右することを知っておいてもらいたい、と相良院長は言う。
「重症化の兆候のある患者を対象にした治療の現場では、CT検査はPCRや抗体などの検査と同等の意義がある」
(2020/06/15 09:38)
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