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多嚢胞(のうほう)性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害による不妊症の原因として多い病気だ。東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)産婦人科の片桐由起子教授は「月経が3カ月以上なかったり、1カ月に2回以上出血したりすることが続く場合は、産婦人科を受診しましょう」と話す。
症状、超音波所見、血中ホルモン値の三つがそろうと診断される
▽肥満なら減量で改善
〔1〕月経異常〔2〕超音波検査で卵巣に多数の小さな卵胞(らんぽう)〔3〕男性ホルモンまたは黄体形成ホルモン(LH)高値―の3項目全てを満たすとPCOSであると診断される。片桐教授は「ホルモンバランスが崩れて定期的に排卵が起こらず、無月経や月経不順になることが特徴です」と説明する。
妊娠可能な年代の女性の約5~8%に発症すると言われている。男性ホルモンの値が高い場合は、ニキビや多毛が見られることがある。肥満のほか、血糖値を下げるインスリンに抵抗性があるケースもある。「肥満の場合、まず減量と生活習慣の改善が必要です。健康的な体重の維持で排卵しやすくなることもあります」
▽ホルモン薬でがん予防
思春期になると、卵巣から女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが分泌される。PCOSでは、排卵後に分泌されるプロゲステロンが低下する。「無排卵や無月経が続いて、エストロゲンだけが子宮内膜に作用する状態が長期化すると、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクが高まります。すぐ妊娠を希望しない場合は、がん予防のためにも治療を開始します。女性ホルモン薬で定期的に月経を起こして子宮内膜を剥がしていきます」と片桐教授。
妊娠を希望する場合は排卵誘発剤を用いる。ただし、患者の多くは卵巣機能の潜在的な能力が高く、刺激が強過ぎると卵巣が膨れ上がり、腹や胸に水がたまる卵巣過剰刺激症候群のリスクとなるため、加減が必要になる。腹腔(ふくくう)鏡下で卵巣に小さな穴を開けて排卵を促す卵巣多孔術を行うこともある。インスリン抵抗性がある場合には、糖尿病治療薬を併用することもある。
片桐教授は「年齢とともに卵巣に残る卵子の数が減ってくると、PCOSが治まることもあります。ただし、無月経や月経不順、不正出血が持続する場合は別の病気の可能性もあるので一度、産婦人科で検査を受けてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/12/15 05:00)
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