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聴神経腫瘍は悪性の腫瘍(がん)と違い、転移などの恐れは少ないとされるが、「できる場所は小脳と脳幹の間の小脳橋角部というわずかな隙間です。腫瘍が大きくなると生命維持に関わる脳幹が圧迫され、場合によっては死に至ることもあります」と神戸大学医学部付属病院(神戸市)脳神経外科の篠山隆司診療科長は話す。
年齢や健康状態、腫瘍の大きさ、聴力障害の程度、脳幹の圧迫の有無などを考慮して治療法を決定
▽さまざまな症状が
聴神経は脳幹から出る神経の一つで、平衡感覚をつかさどる前庭神経と聴力に関係する蝸牛(かぎゅう)神経から成る。聴神経腫瘍はこれらを包むシュワン細胞から発生する良性の腫瘍で、できた場所で大きくなる。しかし、小脳橋角部には聴神経のほか、目や顔を動かす、食べ物をのみ込む、声を出すなどに関わる重要な神経が多く存在する。
聴神経に腫瘍ができると、最初は高音域の聞き取りにくさや耳鳴り、耳が詰まった感じなどの症状が出る。しかし、大きくなるにつれ、めまいや歩行障害、顔のゆがみ、食べ物ののみ込みにくさや、物が二重に見えるなどの症状が表れ、脳幹が強く圧迫されると呼吸や血圧などの調整ができなくなり命に関わる。
聴神経腫瘍は臨床経過や聴覚検査、頭部磁気共鳴画像(MRI)検査から推定できる。しかし、小脳橋角部にできる病気は他にもあり、「最終的な診断は、手術中の所見と摘出した腫瘍の組織検査の結果で確定します」と篠山医師。
▽治療は放射線か手術
治療は〔1〕経過観察〔2〕放射線を腫瘍に集中的に当てる定位放射線治療〔3〕手術―の三つ。年齢や腫瘍の大きさ、症状などを考慮して決定する。
定位放射線治療は体への負担は軽いが、すぐに腫瘍が消えるわけではなく、増大することもあり得る。手術は根治が可能だが、聴神経や顔面神経を傷付けずに腫瘍を摘出するには高度な技術が必要で、術後に聴力低下や顔面神経まひのリスクを伴う。
そのため、2センチ以下で聴力障害が無ければ、頭部MRI検査を定期的に行いながら経過を見ることもある。最近では、手術前に特殊なMRI検査による顔面神経の描写や、特殊なソフトを使った術前シミュレーションと術中モニタリングで、顔面神経の損傷を回避する方法が取られつつある。
篠山医師は「良性とはいえ放置すれば死に至り、根治しても顔面まひが生じたり、耳の聞こえが悪くなったりするという点で悪性とも言えます。初期は突発性難聴やメニエール病と症状が似ています。聞こえの悪さやめまいに悩んだら、1回は脳神経外科で頭部MRI検査を受けてください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2021/12/20 05:00)
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