2024/11/06 05:00
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世の中には、たくさんの種類の「痛み止め」があります。「ロキソニン」や「ボルタレン」、「カロナール」といった商品名は、誰もが知っているでしょう。
「モルヒネ」のような医療用麻薬も、医療現場で使用される有効な痛み止めの一つです。
これまでの医学史上、数々の「痛み止め」が開発され、痛みの強さや種類に合わせて使用できるようになっています。まさに私たちは今、恵まれた環境で生きていると言えます。
◇本人にしか分からない
一方、「どのような痛みか」を本人以外が正確に知る方法は、いまだにありません。
先ほど何気なく「痛みの強さや種類に合わせて」と書きましたが、その「強さ」や「種類」は、本人にしか分かりません。
痛み止めを処方するのは医師ですが、どれほど腕を磨いても、他人の痛みを感じることはできません。手掛かりは、患者さんの主観的な訴えからしか、得られないのです。
血圧を下げる薬を処方するなら、血圧の推移を見て、必要な種類や用量を推し量ることができます。
コレステロールを下げる薬なら、血液検査の数値を見て、必要性を判断することができます。
ところが、「痛み」のような自覚症状をもとに薬を処方するとき、血圧やコレステロール値のような客観的な指標はありません。
「どのような痛みか」を本人以外が正確に知る方法はありませんが、痛みを何とか客観的に把握するためのツールはいろいろとあります【時事通信社】
当たり前のことではありますが、なかなか難しい問題です。
医療現場では、このような事態にどう対処しているのでしょうか。
◇何とか客観的に
「患者さんから十分に話を聞き、その痛みに共感する」というのは当然ですが、それに加え、痛みを何とか客観的に把握するために使うツールがあります。
例えば、VAS(visual analogue scale:視覚的アナログスケール)はその一つです。
10センチの物差しを用い、左端の「0」は痛みがない状態、右端の「100」を想像できる最大の痛みとしたとき、今の痛みがどのあたりにあるかを指し示すものです。
NRS(numeric rating scale:数値評価スケール)というツールもあります。
こちらは、痛みの強さを0から10の11段階で回答します。痛みがない状態が「0」、想像できる最大の痛みは「10」です。
数値で表現するのが難しい、と感じる人は、どうすればいいでしょうか。
幼い子供や、認知機能が低下した高齢の人は、「0」や「100」などと言われても、理解しづらいかもしれません。
その場合は、FRS(face rating scale)があります。
さまざまな表情の顔が描かれていて、今の痛みに近い状態の顔を選ぶ、というものです。
左端は痛みを感じていない楽な表情、右端は痛みで涙をボロボロ流してつらそうな表情です。数字では表現しづらくても、イラストなら、感覚的に選ぶことができます。
◇あの手この手を使って
他にも、さまざまなツールがあります。
痛みの強さだけでなく、痛みの性質や日常生活の障害度、生活の質(QOL)などを問う評価方法もあります。
医療現場では、患者さんにベストな治療ができるよう、あの手この手を使って症状を客観的に把握しようとしているのです。
もちろん、これらの評価法を使っても、評価者が症状を正確に認識できるわけではありません。
将来、さらに技術が進歩し、痛みがより正確に数値化できるようになれば、もっと良い薬の使い方ができるようになるかもしれません。
それまでは、既存のツールをうまく使い、患者さんの痛みに寄り添う姿勢が医療従事者に求められるのでしょう。
(2022/08/03 05:00)
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