治療・予防

正しい理解でケアを
~血友病の「保因者」(国立病院機構大阪医療センター 西田恭治医長)~

 近年、血友病の治療は進歩しており、患者は一般の人と変わらない生活が送れるほどだ。一方、血友病の原因遺伝子を持つ「保因者」については、身体的、精神的な問題があるにもかかわらず、正しい理解や対応が進んでいないという。

 重要なのは、保因者が正しい知識を持ちケアを受けられること。国立病院機構大阪医療センター(大阪市中央区)血友病科の西田恭治医長は「血友病の治療が進歩した今、保因者であるからといって特別な心配は要りません」と話している。

推定保因者か確定保因者かは、家族歴から判断できる

推定保因者か確定保因者かは、家族歴から判断できる

 ◇軽症血友病と同様

 血友病は、出血を止める作用のある血液凝固因子の遺伝子異常により止血が困難になり、内出血などを繰り返す疾患。血液凝固因子をつくる遺伝子は、性別を決める性染色体XとYのうち、X染色体に含まれる。男性はXとY、女性はXとXの組み合わせのため、一般に原因遺伝子を持つ母親からその遺伝子を引き継いで生まれた男児は血友病となるが、女児は片方のX染色体に異常があってももう片方の正常な遺伝子がある程度機能を補い、保因者となる。

 保因者も、「血液凝固因子が半分程度しか機能しないため、軽症の血友病と同様の症状が見られることなどが分かってきました」。

 西田医長によると、保因者は手術や抜歯などの後に一般の人より出血量が多い、血が止まりにくいなどの特徴の他、月経過多や産後出血など女性特有の症状も出たりするという。「ただし、必ずしも出血傾向があるわけではありません」

 ◇可能性あれば対策を

 保因者には、推定保因者と確定保因者がある。家系内に血友病患者がいても、血友病の男児を出産していない女性は推定保因者だ。血友病の男児を1人出産していても、家系内に他に血友病患者がいない女性の場合、男児は遺伝ではなく突然変異による血友病などの可能性があり、女性は推定保因者に当たる。一方、血友病の父親を持つ女児や、血友病の男児を2人以上出産した女性は確定保因者になる。

 家族歴を調べれば、推定か確定かは判断できる。血液凝固因子がどのくらい機能しているかなどの詳細は、血液検査や遺伝子解析が必要になる。

 同センターでは、保因者健診を実施している。家族歴を聞いて判断する他、正しい知識の説明や保因者の可能性がある娘を持つ親からの相談受け付けなどを担う。

 「保因者だからと出産をためらったり、血友病のわが子のケアを優先するあまり、自分の出血傾向を認識していなかったりする女性もいます。保因者の可能性があるようなら、出産や手術などに際して必要な対策を取ることにより、自分らしい人生設計が立てられます」と西田医長は訴えている。保因者診断やケアの実施については、血友病診療を行う各医療機関に問い合わせるとよい。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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