2024/11/29 05:00
なぜ尿検査では中間尿を使うのか
多くの地域で梅雨が明け、いよいよ夏本番といった暑さになってきました。夏に急増する疾患として、熱中症と並んで注意したいのが「ペットボトル症候群」です。糖分を含む清涼飲料水を多量に摂取することで起こる疾患ですが、最近はテレビ番組やネットニュースなどで取り上げられる機会も増えてきたように思います。
その影響か、外来でも「どのくらいの量の清涼飲料水を飲んだら発症するのか」「発症しないためにできることはあるのか」など、多くの質問を頂くようになりました。今回は、このペットボトル症候群についてお話しします。
喉が渇いたら水かお茶を飲むのが望ましい
◇清涼飲料水の過剰摂取で血糖値下がらず
ジュースやスポーツドリンクなどの糖を多く含むドリンクを飲むと、一時的に血糖値が上昇します。糖代謝に問題がなければ、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きにより、しばらくすれば正常値に戻るはずです。
しかし、過剰な糖分を連続で摂取して高血糖が持続すると、インスリンの分泌および働きが悪くなり、血糖値を下げられなくなってきます。その結果、さらに血糖値が上昇し、ますますインスリン分泌も低下し、また血糖値が上昇し…という負のスパイラルが起き、喉の渇きや多尿、強い倦怠(けんたい)感といった、糖尿病の急性症状が表れます。
ここで、喉の渇きを潤すためにさらに糖分を含む飲み物を摂取してしまうと、症状が悪化するという悪循環に陥ります。重度になると、けいれんや意識障害が出現したり、死亡に至ったりする恐れもあります。
◇発症しやすさに個人差
気になるのが「どのくらいの量を飲むと危ないのか」だと思います。しかし、この質問に明確な答えはなく、本当に人それぞれとしか言えないのが正直なところです。私は過去に、1日1リットルのスポーツドリンクを2 週間飲み続けてペットボトル症候群になってしまった患者さんの治療をしたことがあります。一方、留学中に同室だったブラジルの友人は、コーラ6リットルを2カ月間毎日飲み続けていましたが、留学期間中に体調に問題が生じることはありませんでした。
この個人差は、糖の代謝能力に起因するものです。この能力は個人の体質により大きく異なるため、明確な基準を設けることは困難と言わざるを得ません。ただ、世界保健機関(WHO)が出している指針に「肥満などの健康被害を防ぐためには、糖類を総エネルギー量の5~10%未満にすべきだ」との記載があるので、一つ線引きをするのであればここでしょうか。
これは成人男性で換算しても125〜250キロカロリーで、ちょうど500ミリリットルのペットボトル1本分くらいです。お菓子など他の食品からも糖類を摂取することを考えると、民族的に糖代謝力が低い傾向のあるわれわれ日本人は、500ミリリットルのペットボトルでも毎日飲むのは避けた方がよさそうです。
◇予防のために
水分補給のために日常的にジュースを飲むことはやめましょう。特別に汗をかいた際には、電解質や糖分を含むスポーツドリンクなどの摂取が推奨されますが、それ以外の場合には水かお茶が望ましいです。
また、多くのケースでは意識障害などの重篤な症状に至る前に、「いくら飲んでもすぐに喉が渇いた」「トイレの回数が異様に多かった」などの体調変化を自覚しています。自分の体調に気を配り、おかしいと思ったら医療機関にかかることも重要です。
今年の夏も暑い日が続くと思われますが、水分補給に気を付けて乗り切りましょう。(了)
渡邉昂汰氏
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2024/07/26 05:00)
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