治療・予防 2024/11/21 05:00
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がんと診断された患者は、大きなショックを受ける。動揺と不安の中で、後悔しない治療を選ぶためにはどうすればよいのか。大腸がんや胃がんなどに比べて予後が悪い胆道がんを例に、情報や治療の目標などを共有することにより最良の選択肢を探す取り組みについて専門家が紹介した。
胆道がんができる場所=アストラゼネカ胆道がんメディアセミナー資料より
◇予後が悪い胆道がん
胆道は、肝臓で作られた脂肪の吸収を助ける胆汁が流れる道だ。胆道がんには、肝内胆管がん、胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんの四つがある。国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、2019年の部位別がん罹患者数で胆のう・胆管は男性15位、女性が16位となっている。日本胆道学会の安田一朗理事長(富山大学教授)は「圧倒的に70代、80代の高齢者が多い」と言う。その上で安田理事長は「問題は予後が悪いことだ」と指摘する。
5年相対生存率を見ると、胆道がんは24.5%で膵(すい)がんの8.5%を上回るが、大腸がんの約70%を大きく下回っている。胆道がんの症状としては黄疸(おうだん)や体重減少、右上腹部の痛み、発熱などがある。
造影CTによる胆道がんの画像=アストラゼネカ胆道がんメディアセミナー資料より
胆道がんかどうかは人間ドックや検診における血液検査や腹部超音波検査(エコー)をはじめとして、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像装置)が続き、PET(陽電子放射断層撮影)や生検・細胞診という流れをたどる。診断法は進歩しているものの、安田理事長は「画像だけでは診断がつきにくく、早期発見が難しい面がある」と言う。
胆道がんの手術は複雑で、進行している肝臓の半分を切除するといった大変な場合もある。手術による患部の切除ができない場合の化学療法については、10年ほど前では薬剤がほとんどなかった。安田理事長は「薬剤の種類は増えたが、決して多くはない」と話す。
◇エビデンスに偏る危うさ
がんだけではなく、医療ではエビデンス(科学的根拠)が重視される。ただ、京都大学大学院の中山健夫教授(健康情報学分野)はエビデンスだけに偏る医療の危うさを指摘する。
例えば、がん治療で放射線が1000人、薬剤が1000人おり、「生存」は放射線が600人、薬剤が800人だったとする。中山教授は「確実性が高いエビデンスとされ、一つの目安にはなるが、もとから薬剤の方が症状の軽い患者が多かったとしたら、放射線治療より良いとは言えない」と言う。
エビデンスに基づく医療(EBM)という概念は1991年に登場した。「エビデンスだけを重視した概念と捉えるのは誤りだ」。薬Aが薬Bより良くなる可能性が高いと「統計的に有意」に言えたとしても、薬Aで良くならない患者もいるし、薬Bで良くなる患者もいる。中山教授は「データだけでは患者が受ける副作用が分からないなど、不確実なことはたくさんある。エビデンスの限界だ」と指摘する。
◇シェアード・ディシジョン・メーキング
こうした中で注目されているのが、「シェアード・ディシジョン・メーキング(SDM)」という患者と医療関係者の対話による共有意思決定だ。医療者からは治療の選択肢やメリットとデメリット、コストなどを伝え、患者は価値観やライフスタイル、何を大事にしたいかなどを伝える。
インフォームドコンセント(IC)とは違う。専門的な知識と経験がある医療者が示す治療方針への着地が期待されている。SDMでは、双方共に着地点が分からない。双方の対話を通して治療の目指す目標と、それに近付く方法を共有していく。
◇一緒に悩む
アストラゼネカが2024年に実施した調査によると、胆道がんと診断された患者の半数以上はがんの広がりや場所、治療について医師から説明を受けていた。一方、あり得る合併症や今後の見通しについて説明を受けたのは3割を切った。中山教授は「特にエビデンスの確実性が高くない場合など、どうしてよいいか分からない時がある。そういう時に相談し、一緒に悩んで決めるのがSDMだ」と話す。
SDMでは、治療の成果について双方が責任を負うことがポイントになる。中山教授は「複数の選択肢があれば、聞けば聞くほど分からなくなる。知りたくない情報に向き合わなくてはならないなど、患者にとってつらい面も伴う」と付け加える。(鈴木豊)
(2024/10/25 05:00)
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~血液がんのホジキンリンパ腫(国立がん研究センター中央病院 伊豆津宏二科長)~