がんの症状 家庭の医学

■早期のがんは症状が乏しく、進行してはじめて症状が出る
 正常細胞ががん化しても、がん細胞の数が少ないうちは症状がありません。症状が出てから検査をして発見されるのは、進行がんである場合が多いのです。早期にがんを発見するためには、無症状のうちにがん検診を受けることが重要です。がん細胞がある程度増殖し塊を形成したり、転移して離れた臓器で増殖したりするようになると、増殖した部位によってさまざまな症状が出現します。

■見たり触れたりすることでわかるがん
 甲状腺がん、乳腺がん、皮膚がんなど、からだの表面に発生するがんは、見たり触れたりすることで気づくことがあります。また、舌がんのように、自分でも口の中を鏡でのぞいたりして、発見することができる場合もあります。

■疼痛
 がんがあっても必ずしも痛みはありません。がんが大きくなって神経を圧迫したり、神経の周囲に浸潤(しんじゅん)したりすると、疼痛(とうつう)が出てくることがあります。また、がんが大きくなって腸を圧迫して流れがわるくなると、腸が何とか食物を通過させようとする動き(蠕動〈ぜんどう〉といいます)が強くなり、腹痛が起きることもあります。さらにがんが進行して腸が完全につまってしまうと、腸が拡張して強い痛みが出てきたりします。

■熱
 がんが大きくなると腫瘍熱といって、微熱が出ることがありますが、一般的に高熱が出ることはまれです。高熱が出た場合には、がんのために感染症を併発したと考えるべきでしょう。

■出血
 肺がんから出血すると、血液の混じった痰(たん)が出ることがあります。腎臓や膀胱など泌尿器のがんから出血すると、血尿がみられることがあります。食道、胃、大腸など消化管のがんから出血すると、血を吐いたり(吐血)、血便がみられることがあります。胃がんや食道がんから出血すると、血液が消化されて黒くなり、黒色便が出てくることもあります。

■貧血
 出血が長い間続くと貧血になり、顔面が蒼白(そうはく)になったり、くちびるの赤みが失われたりします。血液検査で赤血球数の減少や、血色素(ヘモグロビン)の低下があることなどでわかることもあります。また出血していなくても、がん細胞が骨髄に転移して、血液をつくる細胞がこわされてしまうと、新しい血液ができないために貧血症状が出てくることもあります。

■体重減少
 消化管のがんのために食事が通過しにくくなると、十分栄養がとれず体重減少が認められるようになります。また、消化管以外のがんでも高度に進行すると、体重減少がみられるようになります。

 これらの症状があっても必ずしもがんとは限りません。たとえば、内痔核があれば出血して血便が出てきます。血尿もがん以外の、尿管結石などの病気でもみられることがあります。しかし、これらの症状のなかには、がんによるものもありますから、異常があれば必ず精査して、その原因を確認する必要があります。