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2023年5月、新型コロナウイルス感染症が感染法上の5類に移行してから時間がたつ。飲食店や電車の中、イベント会場などでマスクを着ける人の姿がめっきり減った。しかし、新型コロナウイルス感染の危険がゼロになったわけではない。東京大学医科学研究所付属病院の四柳宏教授(感染免疫内科)は「25年以降、感染がなくなることはない。一定程度の流行を繰り返していくだろう」として、予防対策の一つとしてワクチン接種の重要性を強調している。
新型コロナウイルス(オミクロン系統)=出典・厚生労働省ホームページ
◇強い感染力
現在、主流のコロナウイルスはオミクロン株の一種であるKP.3というタイプだ。オミクロン株は感染力が強い。四柳教授は「どこで感染したのか分かりません」と言う患者が多いと話す。
新型コロナウイルスの潜伏期間は1~7日間。発症すると、喉の痛みや頭痛、せきに加え、発熱などが伴う。他人への感染性がなくなるのは5~10日くらいで、通常は3カ月以内に症状が消える。
◇加齢が最大のリスク
四柳教授によれば、高齢者は疾病負荷(死亡率や罹患率、経済的コストを含む指標)が大きい。高齢ではない人たちと比べると、重症化して入院しなければならない割合は50%以上になるという。四柳教授は「加齢は最も大きな重症化リスクだ」と指摘する。
四柳宏教授
リスクが高まるのは加齢以外にもある。高血圧症や糖尿病、肥満、慢性腎臓病などの基礎疾患がある場合だ。一部の妊娠後期の女性も注意する必要があるという。
さらに、この感染症が怖いのは治ったと安心した後でもさまざまな症状が出ることだ。疲労感・倦怠(けんたい)感、関節や筋肉の痛み、味覚障害などが報告されている。世界保健機関(WHO)は罹患(りかん)後症状(後遺症)について「他の疾患の症状としては説明ができず、発症から3カ月たった時点でも症状が見られる」と定義している。
予防対策として大事なワクチン接種=武田薬品工業提供
◇定期接種とワクチンの種類
新型コロナウイルス感染症は法律に基づく予防接種の対象で、24年10月1日から自治体による定期接種が始まった。対象は65歳以上の高齢者や60~64歳で心臓、腎臓、呼吸器などに障害がある人で、自治体が経費を助成する。ただ、その額は自治体によって異なる。
現在、ファイザー、モデルナ、第一三共、武田薬品工業、Meiji Seikaファルマという5社のワクチンが定期接種に用いられている。ワクチンの種類はメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチン、組み替えたんぱくワクチン、自己複製型mRNAワクチンとなっている。
◇任意接種も考えて
四柳教授は「短期間での有効性、長期的に持続する効果、副反応など、それぞれのワクチンによって特徴がある。ケースバイケースで使い分けることになるだろう」と言う。
定期接種の対象外の人は、全国どこでも任意接種を受けることができるが、全額自己負担だ。四柳教授は「同居家族に高齢者や基礎疾患がある人がいて、家族にうつしたくないと考えれば接種してほしい」と語る。(鈴木豊)
(2024/11/08 05:00)
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