糖尿病、肥満〔とうにょうびょう、ひまん〕

 ここでは、食事療法のみで治療している2型糖尿病と肥満の食事療法をあわせて説明します。なぜなら、肥満の人には「インスリン抵抗性」といって、インスリンがからだのなかでうまく利用できない人が多くみられ、この状態は糖尿病予備群といえるからです。肥満の食事療法はそのまま2型糖尿病の食事療法となります。
 日本糖尿病学会では、糖尿病の食事療法の基本を次のように示しています(日本糖尿病学会編著:糖尿病治療ガイド 2016-2017)。

□初診時の食事指導のポイント
 1.腹七分目とする。
 2.食品の種類はできるだけ多くする。
 3.脂肪は控えめにする。
 4.食物繊維を多く含む食品(野菜・海草・きのこなど)をとる。
 5.朝食、昼食、夕食を規則正しくとる。
 6.ゆっくりかんで食べる。

□食事療法の進めかた
1.適正なエネルギー摂取…標準体重×身体活動レベル
 軽労作(デスクワークがおもな人、主婦など)…25~30kcal/kg×標準体重
 普通の労作(立ち仕事が多い職業)…30~35kcal/kg×標準体重
 重い労作(力仕事の多い職業)…35kcal以上/kg×標準体重
 通常(患者の標準体重を考慮する必要はあるが)は、成人男性では1600~2000kcal、成人女性では1400~1800kcalの範囲となる。
2.バランスのとれた食品構成
指示エネルギーの50~60%を炭水化物からとり、精白していない穀類のような食物繊維の豊富な食品からとる。
 たんぱく質は20%までとする。
 残りを脂質とし、25%を超える場合には飽和脂肪酸を減らすなど脂肪酸組成に注意する。
 適量のビタミン、ミネラルを摂取する。

■適正エネルギーの摂取
 適正エネルギーは「標準体重×身体活動量」によって決めます。標準体重の求めかたは肥満の項(標準体重)を参照してください。活動量は軽労作(デスクワークがおもな人、主婦など)、普通の労作(立ち仕事が多い職業)、重い労作(力仕事の多い職業)によって異なります。糖尿病と診断された人は主治医の指示に従ってください。特に薬物で血糖をコントロールされている人は、自己判断は危険です。肥満の人は、高血圧と同様に標準体重の維持が目標となります。月1~2kg減量するペースで、現在の食べている量から200kcal/日程度を減らすようにします。急激な減量はリバウンドを招きやすく、体調をくずしやすいものです。

■バランスのとれた食品構成
 糖尿病の食事は特別なものではなく、健康の維持をはかるための食事です。つまり、食べかたの基本(生活習慣病の予防と食事)に従えばいいのです。

■3食のエネルギー量の配分を平均にする
 「朝食抜き」「昼はざるそば1杯で夕食たっぷり」という食べかたはなぜいけないのでしょうか。食事であっても、ケーキ、まんじゅう、スナック菓子、ジュースであっても、からだに入ると消化・吸収・分解という過程を経てぶどう糖になり、血液で全身に運ばれます。このぶどう糖はインスリンというホルモンによって筋肉内に取り込まれ、いろいろなはたらきをします。インスリンは膵(すい)臓から分泌されますが、糖尿病ではこのインスリンがすみやかに出なかったり、はたらくべき組織に入ることができなかったりするため、血液の中のぶどう糖が多くなってしまいます。血液の中の糖が多い状態を「高血糖」といい、これが続くことはからだにとってよくありません。
 一度にたくさん食べると食後に血糖が一気に上がり、なかなか下がらず、高血糖状態が続くことになります。また、間食などでダラダラ食べていると、膵臓は常にインスリンを分泌し続けなければならなくなり、疲れてしまいます。これも、からだにとってはよくないことです。ですから、食事をきちんととり間食をしなければ、血液の中の糖の変動が極端にならないで、しかも膵臓に休憩を与えることができるのです。

■ショ糖をできるかぎり少量にする
 ショ糖は化学名で、砂糖のことをいいます。砂糖を少量にする理由は3つあります。
 1.決められたエネルギーの範囲内で、砂糖のように糖質以外の栄養素をもたない食品からエネルギーをとると、栄養のバランスをくずしやすくなります。
 2.砂糖の成分の一種である果糖は、血中の中性脂肪を高くする危険因子の一つです。
 3.砂糖は吸収が早いため、食べたあとすぐに血糖が上がります。急激な血糖上昇は糖尿病のコントロールをみだします。
 糖尿病患者さんにとっての適正な砂糖の摂取量については示されていませんが、さきに述べたWHOの指針が参考になるでしょう。糖尿病、肥満
 また、糖尿病食事療法のための食品交換表では調味料としての64kcal(0.8単位)としています。お菓子やソフトドリンクに含まれる砂糖も含めてこの範囲で考えることになります。この数値ですと、「煮豆や芋類の煮物」のように砂糖をたくさん使う料理が頻繁にならなければ、料理に使う範囲でなら、あまり大きな制限は必要ありませんが、間食には回らない量になります。

■合併症の予防
 糖尿病は多くの合併症を起こしやすい病気です。ですから、糖尿病の治療は合併症の予防がなによりも重要です。この基本に従い、食事療法も合併症の予防が重要です。合併症の予防のためにガイドラインでは下記の指針を示しています。
・アルコールの摂取は適量(1日25g程度まで)にとどめ、肝疾患や合併症などの問題のある症例では禁酒とする。
・高中性脂肪血症の場合には、飽和脂肪酸、ショ糖・果糖などのとりすぎに注意する。
・高コレステロール血症の場合、コレステロールを含む食品を控える(1日200mg未満)。
・食物繊維を多く摂取するようにつとめる(1日20g以上)。
・高血圧合併患者の食塩摂取量は、1日6g未満が推奨される。腎症合併患者の食塩制限は病期によって異なる。高血圧発症予防も重要な治療目標であるので、高血圧発症前から適正な摂取(1日男性8g未満、女性7g未満)をすすめる。

■食品交換表
 糖尿病の食事療法を簡便におこなうための指導媒体として、日本糖尿病学会が編集した「糖尿病食事療法のための食品交換表」があります。1965年の出版以来、改訂を重ね、現在使われているものは第7版です。この交換表では、食品を6群に分け、それぞれの群から、どのくらいとったらよいかが示されているので、それに従うことでバランスのとれた食品構成がとれるようになっています。
 また、適正なエネルギーを摂取するようにするために、各群の食品をエネルギー80kcalに相当する食品重量を「1単位」としてあらわし、同じ単位で交換すればエネルギー量を意識しなくても適正なエネルギーを守ることができるよう工夫されています。