糖尿病、肥満〔とうにょうびょう、ひまん〕

 ここでは、食事療法のみで治療している2型糖尿病と肥満の食事療法をあわせて説明します。なぜなら、肥満の人には「インスリン抵抗性」といって、インスリンが、からだのなかでうまく利用できない人が多くみられ、この状態は、糖尿病予備群といえるからです。肥満の食事療法はそのまま2型糖尿病の食事療法となります。
 日本糖尿病学会では、糖尿病の食事療法の基本を次のように示しています(日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021,p48-49,文光堂,2020)。

□初診時の食事指導のポイント
 1.腹八分目とする。
 2.食品の種類はできるだけ多くする。
 3.動物性脂質(飽和脂肪酸)は控えめにする。
 4.食物繊維を多く含む食品(野菜・海草・きのこなど)をとる。
 5.朝食、昼食、夕食を規則正しくとる。
 6.ゆっくりよくかんで食べる。
 7.単純糖質を多く含む食品の間食を避ける。

□食事療法の進めかた
1.エネルギー摂取量
・性、年齢、肥満度、身体活動量、病歴、患者さんのアドヒアランス(患者さんの治療に対する前向きな受け入れ)などを考慮し、エネルギー摂取量を決定する。ただし、現体重と目標体重に隔たりのある場合には柔軟に対処する。
・治療開始時の目安とするエネルギー摂取量(成人)の算出方法は
  エネルギー摂取量=目標体重×エネルギー係数

目標体重(㎏)の目安
総死亡がもっとも低いBMIは年齢によって異なり、一定の幅があることを考慮し、下記の式から算出する。
  65歳未満       :[身長(m)] 2×22
  前期高齢者(65~74歳):[身長(m)] 2×22~25
  後期高齢者(75歳以上):[身長(m)] 2×22~25
*75歳以上の高齢者では現体重に基づき、フレイル、(基本的)ADL(日常生活動作)低下、併発症、体組成、身長の短縮、摂食状況や代謝状態の評価を踏まえ、適宜判断する。
エネルギー係数の目安
  軽い労作(大部分が座位の静的活動)
   …25~30kcal/kg目標体重
  普通の労作(座位中心だが通勤・家事、軽い運動を含む)
   …30~35kcal/kg目標体重
  重い労作(力仕事、活発な運動習慣がある)
   …35~ kcal/kg目標体重
高齢者のフレイル予防では、身体活動レベルより大きい係数を設定できる。また、肥満で減量をはかる場合には、身体活動レベルより小さい係数を設定できる。いずれにおいても、目標体重と現体重との間に大きな隔たりがある場合は、上記の目安を参考に柔軟に係数を設定する。


・エネルギーバランスは体重の変化に表れる。治療開始後の代謝状態を評価しながら、適正体重の個別化をはかる(肥満者の場合には、まず3%の体重減少を目指す)。
・その後、体重の増減、血糖のコントロールを勘案して設定を見直す。

2.栄養素の構成
・患者の病態・治療や嗜好を考慮し、また体重や血圧、検査所見などを参考に栄養素の組成を決定する。一般的には、初期設定として指示エネルギー量の40~60%を炭水化物から摂取し、さらに食物繊維が豊富な食物を選択する。たんぱく質は20%までとして、残りを脂質とするが、25%を超える場合は、飽和脂肪酸を減じるなど脂肪酸組成に配慮する。ただし、食事療法の継続可能性や体重、血糖コントロール、血圧、脂質に対する影響を勘案して、栄養素の構成は適切に変更すべきである。
・炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラルなど各栄養素が、必要量摂取できるように配慮する。


 ここからは、食事療法のおもなポイントを解説します。
■適正エネルギーの摂取
 適正エネルギーは、前述のように基本的には「目標体重」と「身体活動」で決まりますが、個人の体格や生活スタイル、病態に応じて柔軟に考えることが重要となります。
 糖尿病と診断された人は主治医の指示に従ってください。特に高齢者は、低栄養にならないように必要とするエネルギーを摂取します。薬で血糖をコントロールされている人は、自己判断は危険です。また、急激な減量は、リバウンドを招きやすく、体調をくずしやすいものです。

■バランスのとれた食品構成
 糖尿病の食事は特別なものではなく、健康の維持をはかるための食事です。つまり、合併症などで特別な配慮が必要な場合を除き、食べかたの基本に従えばいいのです。

■3食のエネルギー量の配分を平均にする
 「朝食抜き」「昼はざるそば1杯で夕食たっぷり」という食べかたは、なぜいけないのでしょうか。食事であっても、ケーキ、まんじゅう、スナック菓子、ジュースであっても、からだに入ると、消化・吸収・分解という過程を経てぶどう糖になり、血液で全身に運ばれます。このぶどう糖は、インスリンというホルモンによって、筋肉内に取り込まれ、いろいろなはたらきをします。
 インスリンは膵(すい)臓から分泌されますが、糖尿病ではこのインスリンがすみやかに出なかったり、はたらくべき組織に入ることができなかったりするため、血液の中のぶどう糖が多くなってしまいます。血液の中の糖が多い状態を、「高血糖」といい、これが続くことは、からだにとってよくありません。
 一度にたくさん食べると、食後に血糖が一気に上がり、なかなか下がらず、高血糖状態が続くことになります。
 また、間食などでダラダラ食べていると、膵臓は、常にインスリンを分泌し続けなければならなくなり、疲れてしまいます。これも、からだにとっては、よくないことです。ですから、食事をきちんととり、間食をしなければ、血液の中の糖の変動が極端にならないで、しかも膵臓に休憩を与えることができるのです。

■ショ糖をできるかぎり少量にする
 ショ糖は化学名で、砂糖のことをいいます。砂糖を少量にする理由は3つあります。

 1.決められたエネルギーの範囲内で、砂糖のように糖質以外の栄養素をもたない食品からエネルギーをとると、栄養のバランスをくずしやすくなります。
 2.砂糖の成分の一種である果糖は、血中の中性脂肪を高くする危険因子の一つです。
 3.砂糖は吸収が早いため、食べたあとすぐに血糖が上がります。急激な血糖上昇は糖尿病のコントロールをみだします。

 糖尿病患者さんにとっての適正な砂糖の摂取量については、示されていませんが、さきに述べたWHOの指針が参考になるでしょう(間食と生活習慣病)。
 また、「糖尿病食事療法のための食品交換表」(後述)では、調味料としての64kcal(0.8単位)としています。お菓子やソフトドリンクに含まれる砂糖も含めて、この範囲で考えることになります。この数値ですと、「煮豆や芋類の煮物」のように、砂糖をたくさん使う料理が頻繁にならなければ、料理に使う範囲でなら、あまり大きな制限は必要ありませんが、間食には、回らない量になります。

■合併症の予防
 糖尿病は多くの合併症を起こしやすい病気です。ですから、糖尿病の治療は合併症の予防がなによりも重要です。この基本に従い、食事療法も合併症の予防が重要です。合併症の予防のために日本糖尿病学会では下記の指針を示しています(日本糖尿病学会 編・著:糖尿病治療ガイド2020-2021,p50,文光堂,2020)。

・アルコールの摂取は適量(1日25g程度まで)にとどめ、肝疾患や合併症など問題のある症例では禁酒とする。
・高中性脂肪血症の場合には、飽和脂肪酸、ショ糖・果糖などのとりすぎに注意する。
・食物繊維を多く摂取するようにつとめる(1日20g以上)。食物繊維には食後の血糖値上昇を抑制し、血清コレステロールの増加を防ぎ、便意を改善する作用がある。
・高血圧合併患者の食塩摂取量は、1日6g未満が推奨される。腎症合併患者の食塩制限は病期によって異なる。高血圧発症予防も重要な治療目標であるので、高血圧発症前から適正な摂取(1日男性7.5g未満、女性6.5g未満)をすすめる。

 このほか、尿中アルブミン排泄量が多くなったり、たんぱく尿が持続したりする場合には、たんぱく質の制限をしますが、必ず医師の指導のもとにおこなってください。

■食品交換表
 糖尿病の食事療法を簡便におこなうための指導媒体として、日本糖尿病学会が編集した「糖尿病食事療法のための食品交換表」があります。1965年の出版以来、改訂を重ね、現在使われているものは第7版です。この交換表では、食品を4群6表に分け、それぞれの表から、どのくらいとったらよいかが示されているので、それに従うことで、バランスのとれた食品構成がとれるようになっています。
 また、適正なエネルギーを摂取するようにするために、エネルギー80kcalに相当する食品重量を「1単位」としてあらわし、同じ表内の同じ単位で交換すれば、エネルギー量を意識しなくても、適正なエネルギーを守ることができるよう工夫されています。