治療・予防

幻視やパーキンソン症状
~レビー小体型認知症(国立病院機構宇多野病院 須藤慎治診療部長)~

 認知症の一つであるレビー小体型認知症(DLB)。幻視の他、パーキンソン病(PD)と同じような症状により転倒しやすくなるなどの特徴がある。国立病院機構宇多野病院(京都市右京区)脳神経内科の須藤慎治診療部長に聞いた。

複数あれば認知症専門医へ

 認知症専門医に相談

 認知症は、物忘れ(記憶障害)に始まり判断力などが低下していくアルツハイマー型認知症(AD)が過半数を占める。次いで脳梗塞脳出血による血管性認知症、DLBと続く。

 DLBの原因は、αシヌクレインというタンパク質からなるレビー小体が脳の神経細胞にたまること。DLBでは大脳皮質を中心に広い部分に、PDでは主に脳幹に蓄積する。

 「認知機能の低下に加え、そこにいるはずのない人物や動物が繰り返し見える(幻視)、認知機能がしっかりしているときとそうでないときの波がある(変動)、動きが緩慢になり歩行が小刻みになるなどのパーキンソン症状、睡眠中に大声を発するレム睡眠行動障害などが見られます」

 さらに、立ちくらみや失神といった自律神経症状、抑うつや不安傾向、においが分かりにくくなる嗅覚異常が表れるケースも。食事の飲み込みが困難になり、誤嚥(ごえん)性肺炎を繰り返す場合もある。

 「一つの症状のみでは他の病気と診断され、適切な治療に結びつかない場合もあります。いくつか特徴的な症状があれば、認知症専門医に相談してほしい」。具体的には▽幻視▽妄想や誤認(家族を別の人だと言うなど)▽レム睡眠行動障害―などだ。認知症専門医は、日本認知症学会の公式ホームページから検索できる。

 ◇散歩し部屋明るく

 他の病気と区別するため、認知機能検査、頭部MRI、ドパミン神経や心臓交感神経の働きをみる核医学検査などが行われる。治療には、ADと同じドネペジルを中心に、それぞれの症状に応じた薬剤が使われるが、DLBは症状が多岐にわたるため注意を要する。

 「一つの症状を抑えつつ、別の症状が悪化しないように配慮し、副作用にも注意を払う慎重な薬剤選択と用量調整が必要です」

 その他、部屋を明るくして幻視を予防し、見間違えやすい物を片付けることや、日中は人と会話し、散歩や体操などで体を動かすことも重要という。

 「DLB患者の中には、AD患者と同様にアミロイドβというタンパク質の脳への蓄積がみられる人も少なくありません。研究が進めば、ADの薬をDLB治療にも役立てられるかもしれません」と須藤診療部長は期待を寄せている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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