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アレルギー性結膜炎の意外と知らないアレコレ 【第9回】

 ◇アレルギー性結膜炎の症状、知っていますか?

目の仕組み。アレルギーでかゆみ、目やに、ゴロゴロ感が出る

目の仕組み。アレルギーでかゆみ、目やに、ゴロゴロ感が出る

 目がかゆければアレルギー。この認識はおおよそ合っています。しかし、目のアレルギー(アレルギー性結膜炎)について、詳しくはあまり知られていないのではないのでしょうか。

 アレルギーとは、外敵として抵抗する必要のない異物に対して過剰な免疫反応が生じる状態です。簡単に言うと、異物に対して白血球が頑張り過ぎる状態です。

 結膜というのは目の白目のところ、それからまぶたの裏の部分になり、アレルギーのせいでかゆみ、目やに(白い糸を引くような)、異物感(ゴロゴロ感)が出ます。「かゆくなる」だけではないのです。

 さらに子どもの場合は、それに加えてまばたきが増えるという症状も出ます。このため、「変なまばたきをしているからこの子はチックじゃないかしら?」と保護者が心配して眼科を受診されることもあります。

 子どもは「かゆい」と言う前にかいていることも多く、かいていると下まぶたにシワができます(デニー・モルガン兆候)。これも知らない方は多いです。アレルギーを起こすものをアレルゲンと呼びますが、目のアレルゲンは主に花粉とハウスダスト(室内塵)によって生じます。

子どもは「かゆい」と言う前にかいていることが多い

子どもは「かゆい」と言う前にかいていることが多い

 ◇花粉症と産業革命の関係

 花粉症の古い報告は19世紀前半にさかのぼります。干し草の匂いがする季節に限り花粉症の症状が出ることから、hay fever(枯れ草の熱)と呼ばれました。当時はアレルギーの概念も乏しかったですし、花粉症で生じるくしゃみ・鼻水・だるさは風邪に似た症状ですから、この名前がしっくりきたのでしょうね。

 花粉症が社会的に認知されるようになってきたのは産業革命のときのようです。工場が誕生し、農地が放棄されるようになると、そこにブタクサなどの雑草が大量にはびこるようになりました。そうして花粉症の症状を自覚する人が急増したと言われています。

 日本では花粉症と言うと、スギ花粉症ですが、欧米ではブタクサ花粉症がメジャーです。医化学の祖と呼ばれるパラケルスス先生は「量が過ぎると全てのものは毒になる」と言っています。花粉が増え過ぎると花粉症も増えるということです。

 ◇地球温暖化と花粉症

 日本における花粉症は春のスギ・ヒノキ、夏のカモガヤ、秋のブタクサによるものが有名です。スギは患者数も多く有名ですが、秋のブタクサはそれほど知られていないかもしれません。

温暖化はアレルギー持ちの人に悪い影響を起こしている

温暖化はアレルギー持ちの人に悪い影響を起こしている

 地球温暖化の対策が叫ばれていますが、温暖化は植物にとっては良いようです。暖かくなるだけで緯度の高い地域でも植物は生育し得るようになり、雨が多く降ることも植物の助けになり、CO2(二酸化炭素)が増えると光合成もしやすくなります。その結果、秋のブタクサのシーズンは、早く始まり、長く続くようになり、花粉の量も多くなるとのことです。

 アレルギー持ちの人(私も含めて)にとって、温暖化はこういう面でも悪い影響を起こしているのです。また、スギのシーズンは一般的に2月初めから始まるとされていますが、実は10〜12月の間にも「狂い咲き」があると言われています。秋の気温が高いとスギの花芽(かが)が休眠に入らず、花粉を飛ばすからです。

 3年連続になりますが、2024年の秋も過去最高気温を記録しており、この流れを考えると、何かの花粉が年中、飛んでいるということになります。

 ◇花粉症と食物アレルギーの関連

 花粉症の人の中には、花粉と関係する果物や野菜を食べて唇や口の中にかゆみや異物感を感じる人がいます。これを「花粉―食物アレルギー症候群」(PFAS)と呼びます。

 主なところでは、スギはトマトと、シラカバは大豆やリンゴ等の関連があります。すべての人がなるわけではないですが、何か特定の果物や野菜を食べると口の中のかゆみやイガイガ感を自覚される人は医院で一度、調べてみた方がよいでしょう。

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