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交通事故や脳梗塞、脳出血などで脳に損傷を負い、思考、記憶、言語、判断、感情などの認知機能が低下する高次脳機能障害。慶応義塾大学医学部(東京都新宿区)精神・神経科学教室の三村將教授は「手足のまひなどの身体障害を伴わない場合は、外見からは障害があると分かりにくいため、“目に見えない障害”といわれることがあります。本人は日常生活や仕事で大変な苦しみを抱えており、社会的な支援と周囲の理解が必要です」と語る。
高次脳機能障害の主な症状
▽症状はさまざま
高次脳機能障害の国内患者数は約50万人と推計される。発症原因の6割以上は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害、1割強が交通事故などの脳外傷によるものだ。脳炎、低酸素脳症、脳腫瘍などが原因でなることもある。
三村教授は「シートベルトの着用が義務付けられ、自動車事故による脳の外傷は減っています。一方で、ボクシング、アメリカンフットボール、相撲などのスポーツで繰り返し頭部に打撃を受けることで、高次脳機能障害のリスクが高まるといわれています」と警鐘を鳴らす。
主な症状は、新しいことが覚えられない(記憶障害)、集中できない(注意障害)、手際良く作業ができない・計画が立てられない(遂行機能障害)、言葉をうまく話せない・人の話を理解できない(失語症)などだが、障害は患者によってさまざまだ。
▽周囲の理解が必要
治療法としては、認知リハビリテーションにより、失われた機能の改善や回復を目指す。薬物療法はあまり効果を期待できない。記憶力に関しては、覚えられないことを手帳やカレンダー、携帯端末などに記録。記憶の代替として利用する。注意力を回復させるために、パズルや間違い探しなどの課題による訓練を繰り返し行う。
高次脳機能障害の患者が復職したり、就職したりするには高いハードルがある。三村教授は「会社で指示されたことを忘れる、仕事に集中できない、顧客との関係を築けない、という患者さんは多い。周囲の人にも理解してもらえず、対人関係で問題を起こし、職場を転々とするケースも少なくありません」と語る。
三村教授は「家族にとっても負担の大きい病気ですが、各都道府県に『高次脳機能障害支援センター』が整備されています。悩みを抱え込まずに相談してください。ちょっとしたことでも、患者さんができた点を周囲が評価してあげるだけでも、自信につながり、症状が改善する例もあります」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/02/11 05:55)
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