FEATURE レポート紹介

きょうの学びを10年後に
=災害時支援で活動―関東DMAS=

関東DMAS(Disaster Medical Assistance Student)は、日本集団災害医学会(JADM)内に設立された学生部会「日本DMAS」の関東支部。2017年4月時点で、災害医療に関心を持つ医学部、看護学部、薬学部、救急救命士科などの学生64人が所属しており、災害医療の考え方を共有し、災害時支援を目標に活動している。
パワーポイントなどを使って発表、議論する

左から聖路加国際大3年の岩田萌子さん、日本赤十字看護大4年の植木晴那さん、日本体育大4年の北野信之介さん、同3年の田鎖光さん

中長期にわたる活動

11年3月11日の東日本大震災以降、よく耳にするようになった「災害医療」は地震、津波などの災害、大規模火災や航空機事故などで多数の死傷者が出た際に行う医療のことだ。発生時だけではなく、被災者が以前の生活を取り戻せるような継続的なサポートを行うなど、中長期的な活動が必要だ。
 災害発生時の「急性期(患者の状態が次々と変わる時期)」をイメージしがちであるが、災害発生後の「慢性期(病状は安定しているが、治癒が困難な状態が続いている時期)」では、喪失感などの精神的な苦しみ、十分とはいえない医療環境などの中、被災者の生活を支えていくための専門的な医療活動が必要になってくる。
そのような災害医療について学び活動する関東DMASには、さまざまな思いを持った学生が集っている。
 日本体育大3年の田鎖(たぐさり)光さんは「先輩に誘われてワークショップに参加したのがきっかけでした。災害の知識を学んでいるうちに興味が生まれ、いつしか発信する立場になりたいと思って加入しました」と話す。
 また、日本赤十字看護大4年で副部長を務める植木晴那さんは「高校の合格発表日が東日本大震災が起こった3.11でした。それ以来、『災害時にできることはないのだろうか』と興味を持つようになって、日本赤十字看護大に進学。日本DMASと出合いました」と当時を振り返る。

パワーポイントなどを使って発表、議論する

熊本地震の発生翌日、東京都立川市にある災害医療センターに設置されたDMAT本部に支援へ

「共有と支援」を掲げて

関東DMASは、災害医療へ取り組む理念として「共有と支援」を掲げている。
 「共有」は、災害医療トレーニングコース(DMTC)が中心で、ここでは基本的な災害サイクルや災害医療について興味を持つ学生に向けて情報発信している。月に一回、講師を招いて勉強会も開催。スタッフの災害医療の知識向上にも努めている。その一環として取り組んでいる「学校行脚プロジェクト」と呼ばれる活動では、関東DMASのスタッフが地方の大学に出向き、災害に関するワークショップを開催している。
 もう一方の「支援」は、災害現場での活動を指す。16年は熊本地震に伴い、日本の災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)事務局を支援した。
 日本体育大4年で部長を務める北野信之介さんは「ボランティアセンターを通じ災害ボランティアとして参加したことはありましたが、DMAT経由の支援は初めての経験でした。いずれは自分たちも目標としている場所です。団体にとっても大きな一歩でした」と話す。

パワーポイントなどを使って発表、議論する

新規スタッフオリエンテーションの時に撮影した集合写真。女性の活躍が目立つ

 

現場での気付きと課題

DMATは医師や看護師で構成された医療チームで、 専門的な訓練を受けた災害医療のプロフェッショナル。その事務局に参加して何ができるのか。いざ派遣されたものの、力になれない場面が多かった。そのことについてスタッフの一人、聖路加国際大3年の岩田萌子さんは一時期かなり悩んだそうだ。
「支援で赴いても役に立っているか分からず、悔しさやもどかしさがありました。ニーズに沿った支援は非常に難しいです」
 この感想は他のスタッフも同様で、いざ支援に携わってみて、期待よりも失望の方が大きかったと振り返る。その時、関東DMASのOBの言葉が皆を救った。
 ~今、学んでいることを10年後に返せばいいじゃないか~
 「あの言葉に助けられました。今は勉強させてもらっている立場。『いつかこの経験を生かせればいい』と前向きな気持ちになりました」と岩田さんは話す。
 DMAT事務局支援に参加して課題も明確に。「支援への関わり方が確立されていないと感じました。整備しなければいけないことも見つかりました。自分たちにできることがもっとないか、改めて見つめ直していきたいです」と北野さんは抱負を語る。
 きょうの経験は未来に生きると信じて。関東DMASの活動はこれからも続いていく。