一流に学ぶ 「女性外来」の先駆者―対馬ルリ子氏

(第10回)
理念共有へ、勉強会でレベルアップ図る
女性医療ブームに危機感も

 ◇会議ソフト使い、家で学ぶ医師も

 対馬氏は03年に「女性医療ネットワーク」を設立(06年にNPO法人化)。定期的に勉強会を開き、女性医療の理念共有とレベルアップを図っている。メンバーは全国の女性医師をはじめ、女性医療にかかわる各職種から約500人が参加。妊娠中や出産直後、子どもが幼稚園・小学校に通うぐらいの30代後半の女性が多いため、2年前にはネットワークに「次世代委員会」も立ち上げた。

 インターネットのウェブ会議ソフトを使い、毎月1回、平日午後9~11時に勉強会を開く。子育て中で外の勉強会への参加は難しくても、家にいながら学べるこの方法は若い女性医師たちに好評だ。

 「子どもを寝かしつけてから始めるはずだったのに、赤ちゃんが来てパソコンをたたき回線が切れたり、後ろで子どもが泣いていたり。でも、同じように生活している女性たちが励まし合って勉強しています」

 対馬氏は専門分野を選ぶとき、女性の助けをするためにどの診療科を選ぶべきか迷った。女性の総合医療を学べる環境がなかったからだが、今でもその状況は変わらない。それならば、自分たちで環境をつくるしかないと考えた。

 女性医療ネットワークは、医師としての臨床の視点、科学的な視点のほかに、当事者の視点、ジェンダー(性差)の視点、友人の視点を大切にしている。「どんな患者が来ても丸ごと受け入れ、その人の苦しさ、訴え、気持ちに共感する。それで初めて、その人は前向きにどうしたいのかを考えられるようになると思うんです」(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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