一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第9回)
肥満症は「自業自得でなく病気」
術後は長期フォローが必要

 ◇栄養士が食事指導、患者の交流も

 「当院では専属の管理栄養士とトレーナーを中心とするチームで患者さんをサポートしています。胃が小さくなるので、一度にたくさんは食べられなくなりますが、食事でおなかいっぱいなのに、お菓子をダラダラ食べていたら体重は落ちません。体重が増えたときは食事記録を付けてもらって栄養士が指導します」

 また、アルコールは胃の大きさとは無関係に多量摂取できるため要注意だ。「術後、元の体重に戻ってしまった人は過去に2人いましたが、いずれもアルコール依存症が原因でした」

 減量手術を受けた当事者同士が交流するサポートグループも立ち上げ、お互いの悩みを相談し合えるような環境をつくっている。グループ名の「RENASCER(ヘナセー)」はポルトガル語で「もう一度生きる」という意味だ。

 「今の社会は太った人が過ごしづらい社会だと思います。『先生はスポーツもできて、太ったことがないから分からないでしょう』と患者さんに言われてしまうんですが、やっぱり同じ立場の人同士でないと分からないことがあると思うんです」

 例えば、食事をどう工夫したらよいのか、痩せて余った皮膚をどうするか、体形が変わったことで生じた人間関係の悩みなど話題は尽きない。年に1度のクリスマスパーティーも恒例になった。

 術後は外来で、1カ月、3カ月、6カ月、1年と定期的に経過をみていく。「減量手術は将来的な合併症のリスクを減らすのが目的ですから、最低でも術後5年、僕か患者さんのどちらかが亡くなるまで、年に1度は健康チェックに来てくださいと言っています」

 手術をしたら終わり、ではなく、手術を受けた人が健康に生きていけるよう、生涯を通じたサポートが求められている。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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