一流に学ぶ 天皇陛下の執刀医―天野篤氏
(第20回) 陛下手術で「秘策」 =心原性脳梗塞防ぐ
陛下の手術が行われた2012年2月まで、天野氏が勤務する順天堂医院では左心耳縫縮術を約200例行っており、前年の秋に学会発表も行っていた。
同医院で左心耳縫縮術を多数実施した経緯について、天野氏は「バイパス手術で心臓が元気になっても、手術後に脳梗塞で命を落としたり、後遺症のために健康寿命を謳歌(おうか)できなくなったりしてしまうケースを経験し、それを少しでも防げる手立てがあるなら、やらなければいけないと思いました。手術中に目の前にある左心耳を縫い縮めるだけ。ほんの5分で脳梗塞の芽を排除できるのです」と話す。
天野氏は、ちゅうちょなく陛下に左心耳縫縮術を行った。「後で同業者から異論が出ることはありませんでした。実際にやっている人がいなかったですし、当時は『えっ何それ?』という程度の反応しかありませんでした」と振り返る。
順天堂医院では心臓バイパス手術の全例で左心耳縫縮術を行っており、症例数はすでに1500を超えた。他の病院では行われていなかった時でも、患者のために役に立つことが分かれば積極的に導入するのが天野氏の姿勢だ。
「われわれ医者が絶対に避けなければいけないのは、苦しいと言っている人を放置してその場から立ち去ることです。目の前で心房細動を起こして脳梗塞になる可能性があったら、患者さんが不安に思わなくていいような処置をするのが、究極の親切だと思うんです」
(ジャーナリスト・中山あゆみ)
→〔第21回へ進む〕「日常戻って初めて成功」=健康寿命への思い強く
- 1
- 2
(2017/04/03 17:53)