一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第8回)厳選されたスタッフ=JALの接遇に学ぶ

 ◇笑顔を絶やさず

 診察時には白いワイシャツにネクタイを着用。パソコンの画面だけを見て、患者の顔をまともに見ないことなどはもっての外だ。笑顔を絶やさず、患者がリラックスできる雰囲気をつくるのも大事だ。

 笑顔は大学時代の社交ダンスで身に付けた。

 「最初の頃は『お前のダンスは暗い』と言われたので、鏡を見て笑顔の練習をしました。すると競技会の成績も上がるようになって。今では笑顔が基本になってしまいました」

 ヒットした映画「Shall we ダンス?」で、竹中直人演じるサラリーマンがトイレで鏡に向かって笑顔でポーズを取るシーンがある。石部氏は「あれ、分かるなーって思いますね」と笑う。

 厳しい基準をクリアして採用されただけあって、クリニック受付のスタッフは、笑顔が素晴らしい。クリニックの受付というよりは、一流ホテルのフロント係のような物腰だ。

 ◇名人芸は要らない

 看護師は週2度の外来診察だけでなく、協力病院での手術にも参加する。手術室での経験が豊富なスタッフを採用したのかと思ったが、全くの未経験者だという。

 看護師に対しては、クリニックで一から教育を施す。

 「症例数が多いので、すぐに慣れてくれました。手術の手順では次はこれ、次はこれ、と全部一定にしています。同じことを繰り返せば、ごく普通の人間でも一定以上はできるようになる。そこには名人芸は必要ありません」。

 看護師にも人により、出来、不出来はある。石部氏はその差をできるだけ少なくすることを目指してきた。

 NTT東日本札幌病院 でも、大学病院でも、看護師は慣れた頃に次の部署に異動になることが多い。しかし、クリニックでは同じ仕事を継続できるため、スキルが確実に身に付いていく。

 「コツコツと続ける。結局はそれなんですよ。特別な才能がなくても、ずっとやっていれば、ある程度一流になれるわけです」

 石部氏は、言葉に確信を込めた。

(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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