一流に学ぶ 人工股関節手術の第一人者―石部基実氏

(第11回)患者同士がサポート=HPに続々と声

 ◇退院3日後から活動再開

 「人工股関節の手術を受けると、悪かった方の脚が2~3センチ長くなって左右がそろうので、痛みがとれるだけでなく、立った時の姿勢が変わり、歩き方もきれいになります」

 股関節の痛みがひどくバレエをやめなければならない。落胆していたバレエ教師が手術を受け、退院3日後から活動を再開した。この教師から寄せられた声は「石部先生の手術を受けた者として、謙虚に精進していきたい」と結んでいる。

 両脚同時に人工股関節手術を受けた女性は、両手でつえをついても10分も歩けない状態でクリニックに来院。手術後は毎日1万歩歩けるようになり、将来はウオーキングのインストラクターになりたいと夢を語る。

 手術後に学生時代にやっていた卓球を再開し、全国ラージボール卓球大会で優勝したというつわものもいる。

 他の大勢の患者に混じって、2008年に手術を受けた歌手の前川清氏もメッセージを寄せている。

 前川氏は小学校3年生の時から右足に持病があり、30歳くらいから痛みに悩まされてきた。激痛で眠れない夜もあったが、60歳の誕生日を前に石部氏の人工股関節手術を受けた。痛みもなくなり、悪かった方の脚が3センチ伸び傾いていた両肩もそろった。「これで舞台にも安心して出られる」というコメントの載った新聞の記事が掲載されている。有名人だからといって特別扱いせずに大勢の患者の1人としてさりげなく掲載するところに、石部氏の実直な人柄がにじみ出る。

 ◇著書もヒット

 手術を受けて退院してからは、1か月後と1年後、その後は2年ごとにクリニックでフォローアップを行い、自宅で筋力トレーニングを続けるよう指導する。

 「歩いているだけでいいと思っている人が意外に多いのですが、筋力トレーニングは欠かせません。痛みがなくなると、やらなくなってしまう人もいるので、定期健診では筋力を測定し数字で客観的に分かるようにしています」

 人工股関節の手術を受けた人に限らず、筋力トレーニングは健康寿命を延ばすため誰にでも必要だという。2012年に石部氏が出版した一般向けの啓発書「『老けない体』は股関節で決まる!」は10万部を超す大ヒットとなり、石部氏の提唱する「グッド歩行」「グッド体操」 はテレビや雑誌でも紹介された。今年2月に出版した「健脚寿命を延ばして一生歩ける体をつくる!」もすぐに増刷がかかった。

 手術で痛みがとれたら、さらにその先の「健脚寿命」を延ばしてほしい。著書には、常に上を目指してコツコツ努力してきた石部氏の思いが込められている。

(ジャーナリスト・中山あゆみ)


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