一流に学ぶ 角膜治療の第一人者―坪田一男氏
(第12回)眼科診療で被災地支援=米国から「診療バス」運ぶ
◇被災者に「見える」安心感を
「眼鏡が流されてしまって文字が読めないから、情報が手に入らない」「清潔な水がないのでコンタクトを洗えない」「瓦礫のほこりで目にアレルギーが出てしまった」「緑内障の治療で使っていた点眼薬が手に入らない」―など、目の問題で困っている人たちが、続々とビジョンバンでボランティアの眼科医たちの診察を受けた。
近視用、遠視用の眼鏡もさまざまな視力に応じて用意し、無料で配布、目薬も無償で処方した。
「命は助かったけれど、目が見えないというのは、とても不安な状態です。被災者に見える安心感を届けたいと思いました」
1日数カ所の避難所を回り、車が大きすぎて入れない場所には、ヘリコプターに乗り換えて診察に行った。4月から7月までの3カ月間で3500人以上が診察を受けた。
自らも被災し、クリニックが壊滅的な被害を受けた眼科開業医も、ボランティアに加わった。「被災当初は再建する気力も失っていたけれど、ボランティアで患者の診察を続けるうちに、自分はこの地元の人たちと共に歩んでいきたい。同じ場所で再建することを決めたそうです。ビジョンバンが被災地の患者さんだけでなく、眼科医にも希望を与えることができたのは本当にうれしかったですね」
◇日本版眼科診療バス、フィリピンへ
その後、被災地で眼科診療ボランティアに携わった人たちの間で、日本版のビジョンバンを造ろうという話が持ち上がった。多くの人の力が結集して、日本眼科医会が動き、どこにでも眼科診療を派遣することができる日本製ビジョンバンが完成した。
2013年11月、台風30号がフィリピンに壊滅的なダメージを与えた。この時、日本のビジョンバンが国際貢献第1号として現地に派遣された。坪田氏の最初の思い付きが日本の被災地だけでなく、アジアの支援にまで広がっていった。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2017/10/03 08:40)