一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏

(第8回)
帰国後の勤務先、設備で決定
研修医いない状態にがく然

 ◇理想と程遠い現実

 三角氏は実際に来てみて驚いたという。「建物は古く研修医もいない。それに医療法人徳洲会を設立した徳田虎雄さんの写真が院内に飾ってあるんです。なんだ、こりゃと思いました。徳洲会と知らずに来ちゃった。徳洲会の徳の字も書いてないから」

 三角氏が帰国した1998年当時、徳田氏は衆院議員の議席を失っていたが、その後復活を果たすなど絶大な勢力を振るっていた。ロータブレーターの設備があるというだけの基準で働くことを決めたものの、いざ赴任してみると、理想とは程遠い現実に気が遠くなる思いをしたという。

 千葉西総合病院の院長は、現在の徳洲会理事長の鈴木隆夫医師。彼も米国帰りで、別の病院で院長として働いていたが、米国帰りの三角氏が周囲と摩擦を起こすことを懸念し、徳田氏から命じられ院長に赴任したという。

 「出身が福井県大野市で、私の母方の実家と同郷だったんです。よく話を聞くと、遠い親戚だったことも分かり、お互い言いたい放題。本音で話ができました」と三角氏。病院の環境には当初不満を持ちながらも、辞めることはなかった。

 「時に協力し、時に衝突しながら、2人でやってきました。鈴木先生の存在は大きかったですね」。とことん困ったときには、誰かが助けてくれるものである。(ジャーナリスト・中山あゆみ)

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