女性アスリート健康支援委員会 スケートに懸けた青春、月経の悩みは

長い人生考えて体づくりを
校庭リンクから世界へ、経験次代に―吉井小百合さん


 ◇小学生から男女で体の神秘学ぼう

 中学生時代、全国大会に出場した吉井小百合さん=1999年2月、盛岡市(本人提供)
 吉井さんは引退後に1年間、日本電産サンキョーでコーチを務め、後輩の選手を指導した。その時にはまだ、自分自身の月経に関する知識が不十分だったと反省する。「月経前は気持ちが不安定になりがち。過度に食べたくなって、競技者としてオーバーウエートになり、悩んでしまう場合がある。当時はウエートコントロールに付き合った選手の気持ちをよく理解していませんでした」

 女子選手は中高生の頃から、ウエートコントロールに悩むことが多い。個人差はあるが、月経前や月経中は体重が増えやすく、月経終了後は体重が落ちやすいといわれる。「生理前はこういう食事を取ったほうがいい、生理が終わったから今は体を絞るトレーニングをした方がいい、といった具合に、月経の周期を知った上で、家族にアドバイスするということも指導者には必要になる」と吉井さんは話す。

 母になった今、月経については、人間の体の神秘として、小学生の頃から男女を問わず、一緒に学んでいく方がよいと考える。「私が小学生の時は暗幕の中で女子だけ教わるような秘密主義があった。スケートは同じ場所で男女一緒に競技をすることも多い。お互いを思いやる意味でも、男女分け隔てなく話を聞くのは年代が早い方が良い。男の子はいずれ指導者になる可能性だってあります」

 ◇地域に育まれ、母になっての思いは

 1年ほど前、吉井さんは母校の小学校を訪れ、今もある校庭リンクで子どもたちと一緒に滑った。「温暖化でリンクが凍る期間は短くなったが、子どもたちは今も変わらず、一生懸命スケートに取り組んでいた。東京から引っ越してきた子も初めてスケート靴を履いて『すごく楽しいな』って。ただ滑るだけではなく、環境がつくり出しているものが、子どもの心にもしっかり伝わっているんだなと思いました」

 地元長野で開催されたW杯大会1000メートルで3位に入り、声援に応える吉井小百合さん。地域の人たちに支えられ、世界と戦った=2004年12月、長野・エムウェーブ
 初めての子を授かった時には、母から「選手としての最後に月経をコントロールしたりして、きちんと体づくりをしてよかったね、と言われました」という吉井さん。現役引退後も体の悩みを引きずる元選手を知ることもあり、次代の子どもたちには、探求心を持って自分の体の変化を知り、悩みがあれば自ら調べたり相談したりして解決し、その上で競技を楽しんでほしいと願う。「誰かに悩みを気づいてもらうのを待っているだけでは、競技人生は終わってしまいます」

 保護者に対しては、娘がスポーツ選手であるかどうかにかかわらず、月経の状態を把握していてほしい、と言う。「状態を少し知っているだけでも『きょう学校に行きたくない』といった子どもの変化があったときに、対応が変わってくる。ぜひ、そういったことに気づいてあげられる環境を、家庭で築いていただきたいと思います」。最後に、子育て中の母親らしいメッセージを送った。(了)


◇吉井小百合さんプロフィルなど

◇つらい月経痛、レース後に意識もうろう (スケートに懸けた青春、月経の悩みは・上)

◇心技体整え、勝負のバンクーバー(スケートに懸けた青春、月経の悩みは・中)




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