女性アスリート健康支援委員会 失敗から学んだ女子指導の鍵

成長の瞬間追い求め
十人十色の選手、栄養管理にも工夫―柳本晶一さん


 ◇個々の選手考えた食事

 理事長を務めるアスリートネットワークの活動でバレーボールの指導に当たる柳本晶一さん(本人提供)
 選手の成長のためにはもちろん、日常の体づくりも大切だ。試合によいコンディションで臨むためにも、適切な栄養を補給することが欠かせない。バレーボールはパワーと瞬発力、持久力が求められ、一瞬一瞬の判断力も試されるスポーツだ。

 「インプレー中にボールが止まったら駄目な競技ですから。ボールを持てない、投げられない、止められない。ボールが点から点に行くから、その先に先にと体が動かないといけません。瞬発力もいるし、頭も回らんと。そのへんで栄養管理は切っても切り離せないですね」

 全日本チームでは、サポートスタッフとして、食品や薬を製造する企業から、管理栄養士や調理師を派遣してもらった。管理栄養士らは選手の年齢や体形なども考えながら、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンという五大栄養素を取れるバランスのよい食事を出す。

 「お肉でも、炊き込む時間によってカロリーを抑えてタンパク質を取れるとか、そのぐらいこだわっていましたね」

 ◇第一線で長く活躍できる体に

 適切な栄養補給は、スポーツ障害の予防という観点からも大切だ。「柳本ジャパン」の主力選手の一人は、練習で体を追い込んだ時、体脂肪率が7%ぐらいになって、月経が止まってしまったことがあった。
   一般に、月経が3カ月以上止まる「無月経」を放置すると、若い人でも骨粗しょう症のリスクを高め、疲労骨折を招く恐れがある。運動量と食事量のバランスを見直し、体がエネルギー不足にならないようにすることが大切だ。

 柳本さんは女性マネジャーらの力も借りて選手の体調把握に努め、体脂肪率の変化や血液検査の結果を見ながら休ませたり、個々の練習メニューに強弱をつけたりしたと明かす。

 栄養管理はトップアスリートを支える。国立スポーツ科学センター(東京都北区)の食堂に登場したハイテク機器は、食事を撮影すると、選手の体重などに合わせて摂取量の目安や不足する栄養素を教えてくれる=2018年4月
 社会人の団体球技で5年先、10年先にも好成績を収めるには、ベテランと若手でバランスよく構成したチームが望ましい。お手本となってきた先輩世代が退いた後、しっかり成長した次世代がチームの中心を担う。

 そのためにも、第一線で長く活躍できる体をつくることが欠かせない。「もたないですわ。食べておかんと。それぐらいの運動量ありますもん。食べ過ぎはあきませんけどね。ちょっとウエートオーバーやな思ったら着込んで走り込んだりしてますからね」と柳本さん。世界と戦うには、栄養をしっかり取り、メンタル面などでも専門家の協力が欠かせない時代。指揮官は戦術面の指導だけでなく、幅広くスタッフの力を生かすマネジメント能力も問われている。(冨田政裕)

◇柳本晶一さんプロフィルなど

◇心開かせた「再建請負人」  もっと出てほしい女性指導者(失敗から学んだ女子指導の鍵・上)

◇若手の潜在力引き出すベテラン  ママさん選手にも期待(失敗から学んだ女子指導の鍵・中)




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