女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える

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中高生選手の無理な減量、尾を引く影響


 ◇10代後半に目立つ疲労骨折

 産婦人科医の立場から発言した百枝幹雄・聖路加国際病院副院長
 シンポジウムの後半は、ヨーコ・ゼッターランド日本スポーツ協会常務理事を座長に開いた専門家3人の講演と総合討論。この中で産婦人科医の百枝幹雄・聖路加国際病院副院長は、女性の発育や月経に関する基礎知識から解き明かし、思春期の運動無月経の問題に対する理解を深めた。

 百枝副院長によると、昔より栄養状態がよくなった今、女子の成長のピークは平均11・2歳。初経は同12・4歳。「小学5年生で27%、中学に入る頃には84%の女性が、既に初経を迎えている」という。

 月経とは「約1カ月の間隔(25~38日が正常とされる)で起こり、限られた日数で自然に止まる、子宮内からの周期的出血」。卵巣では卵胞が少しずつ成長し、やがて卵子を排出(排卵)するが、この卵胞からエストロゲン(卵胞ホルモン)が出て、子宮内膜を厚くしたり、骨を丈夫にしたりする。排卵後約2週間で内膜がはがれて「月経」となる。

 医学的には、18歳になっても月経が来ない人を「原発性無月経」、3カ月以上月経が止まった状態を「続発性無月経」と定義する。原発性無月経の原因で一番多いのは、卵巣に先天的な問題があるケースだが、若いアスリートの運動無月経も多い。

 百枝副院長は「無月経になると、エストロゲンが分泌されなくなって、若い人でも骨がもろくなる。最大骨量を獲得するのは20歳前。月経が来ないと、その最大骨量を獲得できず、生涯に影響を及ぼしてしまう」と話し、無月経に伴う疲労骨折が10代後半に多いことも紹介した。

 (左から)百枝幹雄・聖路加国際病院副院長、小清水孝子・大妻女子大教授、西園マーハ文・白梅学園大教授
 無月経になったら放置せず、産婦人科医を受診することが大切だ。利用可能エネルギー不足を改善することが最も重要な治療で、エストロゲン製剤などを用いた薬物療法もある。百枝副院長は、15歳になっても初経が来ないケースを学会が「初経遅延」と位置付け、18歳となるのを待たずに、産婦人科受診を促す方向で動いていることも明らかにした。


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