女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える

勝利至上の「軽量化戦略」やめて
中高生選手の無理な減量、尾を引く影響


 ◇鉄剤注射に共通「食事不足が根本問題」

 女性アスリート健康支援委員会の川原貴会長
 2014年に発足した女性アスリート健康支援委員会は、女性アスリートの健康問題について、選手やスポーツ指導者はもちろん、産婦人科医や学校の運動部の指導教員、養護教諭らに対しても、知識や対策の普及・啓発を行ってきた。この日のシンポジウムもその活動の一環だ。

 シンポの冒頭、主催者を代表してあいさつした川原会長は「国内レベルの競技者や中高運動部レベルの健康問題には支援が行き届いていない」と現状を説明。同委員会が産婦人科医を対象に行ってきた講習会が今年度中に全47都道府県で一通り終了し、アスリートの悩みに対応できる受講者の産婦人科医を同委員会のホームページで検索できると紹介した。

 無月経などの問題を招かないようにするスポーツ現場の取り組みも今後の課題となる。山内教授は特別講演の中で「20歳前の女子長距離アスリート、特に中学や高校の部活の選手は軽量化戦略は避けることが、世界レベルの選手の育成にもつながる」などと訴えた。

 かつて指導した高橋尚子選手は、高校から本格的な中長距離走のトレーニングを始め、大学時代の体脂肪率は、10%以下の一流選手より高い12・5~14・5%だったという。世界トップレベルの長距離ランナーになったのは20代後半だった。山内教授は、20歳以降に世界レベルで勝負する選手は、軽量化戦略を取らざるを得ないとしながらも、狙ったレース前に一時的・短期的に行う範囲に限定するのが望ましいとの考えを示した。

 高橋尚子選手を指導した当時を振り返る山内武・大阪学院大教授
 折しも、本来は貧血治療用の鉄剤注射が競技力向上目的で横行し、改めて問題となっている。日本陸連がこうした鉄剤注射の原則禁止を決めたことも、シンポジウムでは話題になった。

 山内教授は「軽量化戦略で食事制限を行った段階で、たんぱく質、鉄分とも大幅に不足し、潜在的な鉄欠乏性の貧血が起きる。低体重のまま一時的な貧血状態さえ解消されれば、高いパフォーマンスが期待できる」と、鉄剤使用の背景を解説。「鉄剤注射を規制しても、鉄剤を口から取らせるのではないか。一番の根本問題は、選手が食事を取れていないこと。大本の軽量化戦略の問題を考えていかないと、解決にはつながらない」と強調した。(水口郁雄)


◇シンポジウム「思春期の運動性無月経を考える」プログラムなど

◇アスリートに多い摂食障害  女子選手の健康問題、予防と早めの対応を (シンポジウム報告・下)




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