女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える
アスリートに多い摂食障害
女子選手の健康問題、予防と早めの対応を
◇本人は認めたがらず、過食症の場合も
精神科医で摂食障害に詳しい西園マーハ文教授は、中学時代から陸上競技の選手だった高校生の例を引交え、診療現場の実情を報告した。「一般に摂食障害の本人は病状を否認し、治療の必要性を認めないことが多い」と説明。「怒ったり悲しんだりという内的感情に気付きにくく、疲労感が消えて過活動になり、コーチに言われたこと以外の朝練をやったりする」「100グラムでも体重が増えたら死ぬしかない、といった極端な認知をする」などと症状例を挙げた。
摂食障害が起きる背景については「パフォーマンスを上げたい、きれいになりたいといった低体重への期待だけはなく、完全主義の本人の自信のなさや、親との関係なども影響する」と分析。「病的な本人の考えに同調するのではなく、治療を前に進めていくことが求められる」と説いた。
無月経の場合と同様に摂食障害についても、学校現場が問題を拾い上げ、医療と連携して対応していくことが望ましい。西園マーハ教授は「家族も完全主義で本人の問題に気づきにくいことがある」と注意を促し、「通院したらレギュラーを外されるといった恐れから、どうしても受診が遅れやすい」とも指摘した。
シンポジウムを締めくくったのは、日本スポーツ協会のヨーコ・ゼッターランド常務理事を座長に行われた総合討論。百枝副院長、小清水教授、西園マーハ教授の3人は「ぜひ無月経になる前からの月経の不調を(SOSの)サインとして考えてほしい」(百枝副院長)「本人が何を一番困っているかを誰かが聞き取らないと、治療が進まない」(西園マーハ教授)などと、健康問題の予防と早期対応の必要性を改めて強調した。ゼッターランド常務理事も「現役の選手や指導者はパフォーマンス向上に集中しがちだが、競技生活は人生の一場面でしかない」と述べ、生涯の健康を考えた対応を現場の関係者に求めた。(水口郁雄)
◇シンポジウム「思春期の運動性無月経を考える」プログラムなど
◇勝利至上の「軽量化戦略」やめて 中高生選手の無理な減量、尾を引く影響 (シンポジウム報告・上)
(2019/01/26 07:00)