女性アスリート健康支援委員会 女子選手のヘルスケアを考える
月経で体調つかんでコンディショニングを
つらい症状にはピルが選択肢、周期調節も可能に
◇産婦人科医が勧める低用量ピル
では、実際には産婦人科でどんな治療が行われるのか。百枝幹雄・聖路加国際病院副院長は、日本産科婦人科学会の「女性アスリートのヘルスケアに関する管理指針」に基づいて、月経随伴症状のさまざまな治療方法を紹介した。
例えば、月経困難症のアスリートには鎮痛薬またはピルを投与し、効きにくい場合は黄体ホルモン製剤(プロゲスチン)を投与するという。百枝副院長は「ピルは最も長期的に、安全に使える」と述べ、初経後でおおむね15歳以上なら必要に応じ服用しても問題ないという考えを示した。
低用量ピルを継続的に使えば、症状を緩和すると同時に、年間を通して月経周期を調節することも可能。「大会や試合がある時期、減量が必要な時期などに合わせて、月経をコントロールすることもできるので、産婦人科医に相談してほしい」と百枝副院長。
トップ選手の間では、欧米の後を追うように、月経周期調節のためのピル服用が広まりつつある。集会では、前回のリオデジャネイロ五輪に出場した日本選手の27・4%が調節を行ったことも報告され、今後の啓発によってさらに普及しそうだ。
◇基礎体温測定、アプリで管理も
これまで紹介した知識を生かし、心身の健康を守ってスポーツに取り組むためにも、女子選手は日頃から、自分の月経周期と体調をきちんと把握することが望ましい。
ここでは月経周期と体重の関係も押さえておきたい。一般に、月経前には体がむくんで1~2㌔増えることがあり、月経中にかけて体重が落ちにくい。柔道の女子選手225人に尋ねたところ、「減量と月経が重なった場合には体重が落ちにくい」と3分の2の選手が答えたという調査結果もあるという。
鈴木研究員は、継続的に月経の記録を付けたり、基礎体温を測定したりするといった体調把握のノウハウも具体的に説明。「現在はスマホアプリで、基礎体温の推移や生理日、試合・大会の予定をまとめて管理することもできる」と紹介した。
鈴木研究員は「やはり正常な月経を保ちながら、トレーニングすることがパフォーマンス向上には重要」と話し、鎮痛剤の服用に加えて産婦人科受診も選択肢として伝え、必要に応じ周囲に相談して受診するよう勧めていることを紹介。「指導者やチームスタッフの方々は、選手がセンシティブな内容も相談できるような環境をぜひつくってほしい」と訴えた。(水口郁雄)
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(2020/02/15 12:37)