こちら診察室 よくわかる乳がん最新事情

第9回 放射線療法で乳房周辺の再発予防
温存術後は全員、全切除後はリスク高い人に 東京慈恵会医科大の現場から

 ◇治療中から終了後にかけ皮膚炎などの副作用

 よく知られるように、放射線治療には副作用もあります。代表的なのは放射線皮膚炎、放射線食道炎、放射線肺炎の三つです。

 最も多く見られるのが放射線皮膚炎です。放射線治療が始まって数週間たった頃から皮膚の乾燥、かゆさや痛みが表れます。皮膚がむけてしまうこともありますが、そこまで症状が強くなる人はあまり多くありません。症状が最も強く出るのは治療終了から2週間以内が多く、終了後1~2カ月で落ち着きます。

 放射線皮膚炎は、強くこする、貼ったばんそうこうを剥がすといった刺激で悪化します。症状が出てきたら、塗り薬の処方などで対応しますので、担当医や看護師に伝えてください。また、放射線治療後の皮膚は乾燥しやすいため、かゆみなどがある場合は保湿を心がけるよう勧めています。

 放射線食道炎は、鎖骨上窩リンパ節(特に左側)への放射線治療を行う場合にしばしば見られる副作用です。食べ物や飲み物を飲み込むときに生じる「引っかかる」感じ、違和感や痛みが主な症状で、症状が表れる時期、落ち着く時期は放射線皮膚炎とほぼ同じです。熱い、辛いといった刺激物の飲食は症状を悪化させるので、放射線治療期間中は控えてください。

 放射線肺炎は、放射線治療が終わって数カ月後、多くは半年以内に発生する副作用です。放射線皮膚炎などとは異なり、治療を受けた全員に生じるものではありません。発生率は1~2%程度と言われています。

 長引くせきや微熱、息苦しさが典型的な症状です。症状が続く際は医療機関で受診してください。ただし、放射線肺炎は通常の肺炎との区別が難しいことがあります。放射線治療を受けたという情報が適切な診断と治療への鍵となる場合があるので、医師に必ず伝えてください。

 これら三つの副作用以外に、眠気や疲労を感じる人もいますが、通常は日常生活を維持しながら放射線治療を受けられます。また、放射線照射自体で痛みや熱さを感じることはありません。

 ◇通院減らす照射法を選択できる場合も

 ところで、乳房温存術後の放射線療法では、1回の放射線量を増やして照射回数を少なくする照射法を選択できる場合があります。「寡(か)分割照射」と呼ばれる方法です。

 治療期間が通常の5週間から3~4週間に短くなるため、通院の負担が減ります。「50歳以上/腫瘍サイズ5センチ以下/腋窩リンパ節転移なし/抗がん剤治療を行っていない」という条件を満たしている場合には、治療の効果も副作用も、通常の照射と比べて大きな差がないと言われているので、選択肢として示しています。

 一方、乳房全切除後の放射線療法に関しては、乳房再建手術との関連に注意が必要です。

 全切除術後に乳房再建を行うことが増えてきていますが、胸壁への放射線治療をすると、胸部の皮膚が弱くなる、硬くなる(伸びにくくなる)といった変化が生じるため、再建の時期や方法、見た目に影響を及ぼすことがあるからです。

 乳房再建を希望する場合は、放射線治療を実施する可能性と、行った場合の影響について、医師にあらかじめ相談することをお勧めします。(東京慈恵会医科大学附属病院放射線治療部・木嶋良和)


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