こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎
第1回 バリアー弱まり、アレルギー反応
~アトピー性皮膚炎のメカニズムを理解する~ 野村有子・野村皮膚科医院院長
自分の肌をじっと眺めてみてください。
きめ細かい、しっとり潤っている、かさついている、赤くぶつぶつかゆい部分がある…改めて観察してみると、意外に気付いていなかった肌の状態があるはずです。
この肌、すなわち皮膚とは、人間の体を覆い、外界との境界を作る薄い膜のことをいいます。
実は皮膚は、肝臓や心臓、肺などと同じく、臓器の一種です。厚さは1・5~4㍉と非常に薄い膜なのですが、面積は約1・6平方㍍、重さは約3㌔と、臓器の中でも最も大きなものです。
この皮膚は、人間の体を保護するだけではなく、免疫をつかさどったり、体温を調整したりと、さまざまな役割を担っています。皮膚全体にトラブルが生じれば、体調が悪くなるのは当然のことでしょう。
ただ幸いなことに、心臓や肝臓とは違って、皮膚は直接、目で見ることができます。トラブルがあれば、他の臓器よりも早く気付き、早く治療を開始できますし、日々のメンテナンスは自分ですることができます。
◇1カ月で生まれ変わる「最大の臓器」
アトピー性皮膚炎は、皮膚に「かゆみ」を伴う湿疹ができ、その湿疹が慢性的に悪くなったり、良くなったりを繰り返す病気です。その正しい理解のために、まず、皮膚の構造や仕組みから話したいと思います。
皮膚は表皮、真皮、皮下組織から成り立っています。最も外側にあるのが表皮で、アトピー性皮膚炎に深く関わる部分です。この表皮は外側から順に、角(かく)層、顆粒(かりゅう)層、有棘(ゆうきょく)層、基底(きてい)層という4層構造になっています。
そして表皮は、内側の基底細胞が分裂して有棘細胞に、さらには顆粒細胞に、と約1カ月かけて生まれ変わります。古い表皮は、角質(いわゆるアカ)となって、2週間ほどで自然にむけてなくなっていきます。
つまり、ダメージを受けた皮膚でも、必ず生まれ変わって治るという自然の力を兼ね備えているのです。だから私はよく、患者にこう伝えています。
「皮膚表面がかさついている程度なら、角層が2週間で生まれ変わったころには良くなります」「皮膚全体がただれている場合は、皮膚が1カ月かけて生まれ変わるまで、きちんと治療を続けましょう」
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(2019/06/03 07:00)
こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎
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