こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第1回 バリアー弱まり、アレルギー反応
~アトピー性皮膚炎のメカニズムを理解する~ 野村有子・野村皮膚科医院院長


 ◇「天然保湿因子のもと」など減って乾燥肌に

 それでは、どうしてアトピー性皮膚炎になるのでしょうか。原因は二つあります。

 一つは皮膚のバリアー機能の異常、もう一つはアレルギー反応です。その二つが絡み合って、かゆみのあるアトピー性皮膚炎という病気が起きます。

 アトピー性皮膚炎にかかっている患者の背中(野村医師提供)
 皮膚のバリアー機能の異常から説明します。

 表皮の一番外側にある角層は、10~15層の角質細胞がレンガのように積み重なってできています。このレンガ内の水分を保つ役割をしているのが天然保湿因子です。

 そして、レンガの一番外側を覆って内部の水分が蒸発しないように、ラップフィルムの役割をしているのが皮脂膜。レンガとレンガをくっつけるセメントの役割をしているのが、セラミドなどの角質細胞間脂質です。

 ラップとセメントがきちんと保たれていると、角層に水分が保たれ、乾燥やさまざまな外部の刺激から身を守ることができます。

 ところが、アトピー性皮膚炎の皮膚では、天然保湿因子のもとになるフィラグリンというタンパク質が減少していること、角質細胞間脂質が減少していること、汗をかきにくいため皮脂膜が弱いこと―などが原因となり、皮膚に水分を保つことができなくなり、表面が乾燥します。

 そのために、細菌やホコリ、ダニなどの外的刺激から体を守ってくれる働き(バリアー機能)が低下し、皮膚内部に異物が侵入しやすくなっているのです。

 ◇原因物質入り込み、かゆみの強い反応

 もう一つの原因である「アレルギー反応」は、体の正常な働きを保つ「免疫」の反応(抗原抗体反応)が過剰になったものといえます。

 バリアー機能の弱まった角層の表面からは、いろいろな物質が皮膚の中に侵入してきます。異物が入ってくると、有棘層にあるランゲルハンス細胞という細胞がそれを察して、異物を排除しようと免疫的な反応を起こします。

  ところが、通常は反応しないような異物に対しても、過剰に反応してしまうことがあります。これをアレルギー反応と呼び、反応が強く皮膚に出ると、赤くなったり、かゆくなったりするわけです。

 このようなアレルギー反応は、起こしやすい人と起こしにくい人がいます。

 気管支ぜんそくやアレルギー性の鼻炎、結膜炎になったことがあるか、両親やきょうだいに気管支ぜんそくアレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎の患者がいる。あるいは、血液検査でIgE抗体(アレルギー反応の強弱の目安)の数値が高いと言われたことがある―。こうした人は「アトピー素因がある」、すなわち、アレルギーを起こしやすい体質があると考えられます。

 アレルギーを引き起こす物質は、アレルゲン(抗原)と呼びます。このアレルゲンは人によって多種多様です。

 まとめますと、アトピー性皮膚炎とは、バリアー機能が弱まってスカスカになった皮膚に、アレルギーを引き起こすアレルゲンが入り込み、皮膚の中でかゆみの強いアレルギー反応を起こした病気と言えます。(野村皮膚科医院院長・野村有子)


 野村 有子氏(のむら・ゆうこ)

 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。


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