こちら診察室 人生が鼻でこんなにも変わる⁉ 鼻にまつわるドクターのハナシ
鼻茸って何?
~嗅覚障害、鼻詰まり~ 【第4回】
「鼻が詰まってスッキリしない」「匂いを感じにくくなった」。そんな症状に悩んでいませんか? もしかすると、その原因は鼻茸(はなたけ)かもしれません。鼻茸は鼻の粘膜が炎症によって膨らんでできる良性のポリープですが、放置すると鼻詰まりが悪化し、嗅覚障害や頭痛を引き起こすことがあります。
今回は、原因や治療法、予防策について解説します。鼻詰まりや嗅覚の変化が気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

鼻茸とは鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れてポリープ状に膨らんだもの(イメージ画像)
◇鼻茸とは?
鼻茸は、鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症によって腫れてポリープ状に膨らんだものです。良性の腫瘍であり、基本的に悪性化することはありませんが、放置すると鼻詰まりがひどくなり、日常生活に支障を来すことがあります。
初期の自覚症状はほとんどありませんが、進行すると鼻詰まりや嗅覚の低下が現れ、鼻水が増えたり、喉に流れ込む後鼻漏が悪化することがあります。また、鼻茸が大きくなると、鼻腔内の圧迫によって鼻出血を伴うこともあるでしょう。さらに、症状が広がると、目の奥や額に痛みを感じることがあります。
鼻茸は成人に多いですが、小児でも嚢胞性線維症などの基礎疾患がある場合に見られることがあり、慢性的な炎症によってキノコのように膨らんでいくことが特徴です。鼻詰まりや嗅覚障害が続く場合は、早めに専門医の診察を受けるようにしましょう。
◇なぜ鼻茸ができる?
鼻茸は、アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などによって、長期間炎症が続くことで粘膜が腫れたり、厚くなったりすることで形成されます。また、アスピリン喘息(NSAIDs過敏症)や免疫系の異常による粘膜のむくみが原因となることもあるでしょう。鼻茸はさまざまな要因が関係しているため、根本的な原因を特定し、適切な治療を行うことが重要です。

適切なケアや治療で症状をうまくコントロールしていくことが重要(イメージ画像)
◇治療の流れとポイント
鼻茸の診断方法や治療法について説明していきます。どのように診断が行われるのか、また治療においてどのような選択肢があるのかを紹介します。
・どうやって見つける?
鼻茸の診断は、まず問診から始まり、次に内視鏡を使って鼻茸の有無や状態を確認します。この内視鏡検査は、鼻腔内部を直接見ることができるため、より正確な診断が可能です。必要に応じて、CT検査を行い、副鼻腔の状態や鼻茸の大きさなどを詳しく調べます。また、場合によっては患部の一部を切り取って詳しく調べる生検を行うこともあります。
・薬で治る? それとも手術?
鼻茸の治療法は、症状の程度や原因によって異なります。軽度の場合は、抗アレルギー薬やステロイド薬を使用して炎症を抑える薬物療法が行われ、鼻茸の縮小を促します。また、症状が軽く鼻茸が小さい場合は、無理に治療せず経過を観察することもあるでしょう。一方、薬で改善しない場合や鼻茸が大きい場合は、手術で取り除くことを考えます。
・入院は必要? 痛みは?
鼻茸の手術が必要な場合、入院が必要かどうかは手術の種類によって異なります。鼻茸摘出術はほとんどの場合、日帰り手術が可能ですが、副鼻腔炎が広がっていたり、鼻茸の再発が繰り返したりする場合には、入院して内視鏡下副鼻腔手術を検討する必要があります。
手術では、症状に応じて局所麻酔や短時間の静脈麻酔、全身麻酔が行われます。個人差はあるものの、大きな痛みは感じにくいでしょう。術後の痛みは、処方された鎮痛薬で軽減できる場合が多いです。術後は経過をしっかり観察し、無理をせずに日常生活に戻るようします。
・再発予防
鼻茸は、慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎のある人が再発しやすいとされています。特に好酸球性副鼻腔炎は鼻茸が繰り返しできやすいため、定期的に通院をして経過を観察するようにしましょう。適切なケアや治療を心掛け、症状をうまくコントロールしていくことが重要です。医師の指導の下で継続的なケアをしていくことで、再発のリスクを減らすことができるでしょう。(了)
荒木進医師
荒木進(あらき・すすむ) 東京医科大学医学部を卒業後、同大学耳鼻咽喉科学教室に入局。オーストラリア・メルボルン大学での難聴の基礎研究、東京警察病院医員、厚生中央病院医長、東京医科大学霞ヶ浦病院科長、東京医科大学准教授を経て、08年に千葉県流山市で流山おおたかの森耳鼻科モーニングクリニックを開院。18年1月、「こころ安らぐ空間」をコンセプトに、人間ドックと日帰り手術専門を行うクリニックとしてモーニングクリニック六本木 内科・耳鼻咽喉科ORを開院。09年1月からは東京医科大学兼任准教授を務める。
(2025/03/19 05:00)
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