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重度の鼻づまりは手術が必要 【第3回】鼻中隔湾曲症の仕組みを解説②
前回に引き続き「鼻中隔湾曲症」のお話です。今回は鼻中隔湾曲症の治療法、手術以外の対処法、手術を受ける上での判断基準などを解説していきます。自分に適した治療やケアを見つけるための参考になれば幸いです。

鼻中隔湾曲症は、鼻の穴の間の仕切りである鼻中隔が曲がっている状態(イメージ画像) 引用:モーニングクリニック六本木
◇根本解決には手術が必要
軽度の鼻づまりや副鼻腔炎は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬、ステロイド点鼻薬を使用することで症状を抑えることが可能です。しかし、薬で改善しない重度の鼻づまりや慢性副鼻腔炎がある場合は、「鼻中隔矯正」という手術が必要になります。ここでは、鼻中隔矯正術の流れや術後の症状について詳しく説明します。
鼻中隔矯正術は、鼻の中の仕切り(鼻中隔)の歪みを改善する手術です。局所麻酔または全身麻酔を施して行われます。
手術では、鼻中隔の曲がった部分の粘膜を切開し、軟骨や骨を丁寧に剥離した後、不要な部分を切除・調整します。最後に粘膜を縫合し、出血を防ぐために止血処置を行い、術後は鼻の中に特殊なスポンジを入れて圧迫することで傷からの出血を抑えます。
手術後は術後出血や二次感染のリスクがあるため、処方された抗菌薬を服用し、鼻に強い衝撃を与えないように過ごすことが大切です。なお、顔の成長に影響を及ぼす可能性があるため、この手術は19歳以上の方が対象となります。
手術後は鼻の粘膜が一時的に腫れ、鼻づまりが続くことがありますが、次第に改善します。症状によっては入院による手術が必要な場合もありますが、多くは短期間で退院できるでしょう。
ただし、手術後の出血を防ぐために、退院後2週間は飲酒・喫煙・激しい運動・強く鼻をかむ行為を避けることが重要です。血がたまることがあるため、定期的な診察を受け、必要に応じて止血処置を行います。
回復には個人差があり、数回の通院が必要です。特に術後1週間は出血のリスクが高いため、安静に過ごし、異変を感じたら速やかに医師に相談しましょう。
◇日常生活でできる工夫~手術以外の対処法
鼻中隔湾曲症による鼻づまりに悩んでいても、すぐに手術を決断するのは不安という方も多いでしょう。手術以外に自分でできる対処法を紹介します。
まずは、鼻の中はホコリや花粉が付着しやすいため、専用の鼻洗浄液で洗浄し、清潔を保ちましょう。加湿器や保湿スプレーを活用し、鼻の乾燥を防ぐことも大切です。
また、鼻中隔湾曲症が原因で鼻呼吸がしにくくなると、口呼吸が増え、呼吸が浅くなりがちです。浅い呼吸が続くと、脳への酸素供給が不足し、頭痛や片頭痛、集中力の低下を引き起こすことがあります。これを防ぐためには、意識的に深呼吸をする習慣をつけることが大切です。猫背など悪い姿勢は呼吸を妨げるため、背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つことも重要です。
さらに鼻腔が狭く湾曲していると、ハウスダストや花粉などのアレルゲンによって粘膜が腫れ、さらに鼻の通りが悪くなるため、鼻づまりが悪化しやすくなります。そのため、アレルゲンをできるだけ減らすことが大切です。また、アレルギー症状を和らげることで、慢性副鼻腔炎になるリスクも軽減できます。

鼻中隔湾曲症を完治させるには鼻中隔矯正術を受ける必要がある(イメージ画像)
◇手術を受ける判断基準は?
日常的な工夫や薬物療法による治療を試しても鼻づまりが改善せず、効果がない場合は手術を検討するのも一つの選択肢です。手術を決断する際の判断基準や、手術のメリットデメリットについて説明します。
鼻づまりが続くと呼吸がしづらくなるだけでなく、集中力低下や睡眠不足を引き起こし、日常生活に支障を来すことがあります。特に、これらの影響によって生活が困難に感じる場合は、症状の重さにかかわらず手術を検討するのも一つの方法です。生活の質を向上させるためにも、自分に合った治療法を選ぶことが重要です。
手術のメリットは、長年悩んできた鼻づまりが改善し、呼吸がしやすくなることです。睡眠の質が向上し、集中力アップなどの効果も期待できるでしょう。一方で、手術に伴う大量出血や感染のリスクがあるほか、まれに鼻中隔穿孔(びちゅうかくせんこう=鼻中隔に小さな穴ができること)や鞍鼻(あんび=鼻の形がわずかに変わること)といった合併症が生じるデメリットも考えられます。医師と十分に相談した上で、手術の必要性を慎重に判断することが大切です。
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(2025/03/05 05:00)