ダイバーシティ(多様性) 当事者が見た色覚特性のキラキラした世界

「桜の花は白いと思っていた」
~不便、違和感、間違いさまざま~ 【第8回】

 どんな物事においても当事者でないと分からないことは非常に多いと思います。私は眼鏡店で働いていますが、実は視力がとても優れています。両目とも2.0。就職したばかりの頃は、眼鏡の苦労を全く知らない、ある意味すごいメガネ屋でした。聞いたことがある人もいると思いますが、目が良い人ほど老眼になるのが早い。これは迷信ではなく、間違いない事実です。私は現在41歳ですが、3年前から遠近両用を使っています。細かい字が見えない夫に、4歳下の妻は本当に不思議そうな顔を向けます。そんな視線に「こんちくしょう」と思う日々です。

 こんにちは、長瀬です。きょうは当事者の「ちょっと困った」というリアルな体験談を基に、色覚特性への理解を深めてほしいと思います。どんなときに違和感を抱いたり、不便さを感じたりしているのでしょうか。

 ◇「困った」体験

 まず箇条書きにしてみました。

 ▽人間関係
 ・世界がモノクロだと思われている
 ・色覚特性の説明が自分でもできない
 ・カムアウト後、「これ何色に見える?」というクイズを延々とやらされる
 ▽食べ物
 ・チョコクッキーだと思ったら抹茶クッキーだった
 ・肉に火が通っているかよく見えない
 ・弁当のトマトやブロッコリーに彩りを感じない
 ▽表示
 ・東京メトロの路線図が理解しにくいときがある
 ・赤で書かれた文字でも強調している感じがしない
 ・表計算ソフト「エクセル」のセルの色が分からなくて困る
 ▽間違い
 ・紫のジャケットを買ったはずが芸人の林家ぺー(が着ているようなピンク)だった
 ・トイレに入ったら男女逆だった
 ・桜の花は真っ白だと思っていた
 ▽美術
 ・着色作業が苦痛
 ・照明の明るさによっては全く色の判別がつかない
 ・子どもとお絵描きするのが少し面倒
 ▽ゲーム
 ・発光ダイオード(LED)の赤と緑が判別できないので電源のON・OFFが不明
 ・「マリオカート」で遊んでいて、ドヤ顔で「赤甲羅」を放ったつもりが「緑甲羅」だった
 ・「ぷよぷよ」は瞬時に判断ができなくて苦痛

 ゲームのラインアップが昭和を感じさせますが、ご了承ください。最近は「パズドラ」や「スプラトゥーン」など、色覚特性があってもゲーム画面が見やすくなるように専用フィルターが実装されていることも多くなってきました。

 見えにくいにもかかわらず、果敢にゲームにチャレンジする私。ゲームで少し感動したお話をします。当時から老眼を自覚していた私は任天堂のゲーム機、3DSを持っているにもかかわらず、老眼対策と言い訳しつつ、妻の反対を押し切りながら新しい3DSLL(大画面版)を買いました。最近の家電にはパイロットランプ(通電確認ランプ)が付いているものが当たり前になってきました。通電・起動中または充電中にランプがつく仕組みです。

 一般的にはLEDライトが用いられ、電源オンのときは緑、オフのときは赤となります。ライトは小さく、かつ苦手な色で、色覚のずれがあると色の違いにも気付かないことが珍しくありません。旧3DSは充電が切れそうになると赤く光って教えてくれますが、私が気付かないためにすごく良いところでいきなり電源が落ち、涙したことは数知れません。新しい3DSLLはそこをきちんと変えてくれました。まず電源オンで電池の残量が十分なときのライトの色は緑ではなく青。残量が少なくなると赤になり、しかも点滅します。全色盲や視力が低い状態でも分かるようにしたのです。ゲーマーの私はとても感動しました。さすが任天堂さんです。

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